鋭い批判と疑問の残る仮説
★★★★☆
テレビの政治への影響力について、主に小泉の郵政総選挙を軸に分析している。
短絡的な主張、たとえば小泉の圧勝はすべてメディアが原因だ、NHKは政府の手先だ、みたいなものに対しては、それぞれ実証的に鋭い反論が行われている。
この点については本書は非常に面白い。
また、自民党と民主党のメディア対策の徹底比較なども行っている。
あのとき、こんな差があったのか、といまさらながらに思わされるデータをいろいろ挙げている。
ただし、小泉圧勝の原因を「経済回復」だとする筆者の論拠は弱いように思われる。
筆者の挙げる論拠は、実際に経済が回復したデータと50%を超える高い支持率の維持を挙げているが、ぶっちゃけ前者は経済回復が原因なら当たり前だし、後者は因果関係が不明である。
経済回復が原因とする論は相当な無理があるだろう。
この点だけ引っかかったので☆一つ減点するが、総じて面白い本ではあった。
小泉政権とテレビメディアの関係
★★★☆☆
小泉首相が,毎日記者の前に立ってコメントする場面は,当たり前の光景になっており,それが小泉首相が始めたことだとだとは知らなかった.小泉氏ほどメディアを巧く使った首相は少ないし,またメディアも彼をその単純化したコメントから重宝していた.
昨年の911衆院選の自民の圧勝は,郵政民営化というわかり易い指標で争われたわけだが,そこにメディアの報道がどのように関与したかを検証している.センセーショナルな刺客などが話題を呼んで自民の圧勝に繋がったかのように思えるが,実際には経済政策の成功により景気が回復したこと,そして改革路線が着実に進んでいることが原因であると分析している.
著者は,小泉シンパであるし,反真紀子であることは前から知られていたが,田中真紀子氏には非常に厳しい.また,小泉氏の自衛隊海外派遣についての変節に関する部分では,多少意固地になっている部分もあり,あまり本書では重要性を感じさせない部分ではある.