とても基本的なこと。
★★★★☆
分野は何であれ、世の中を語るのに必要不可欠なのはテレビのワイドショーを見てコメンテーターの言葉に頷くことではない。きちんとしたデータと精錬された手法と論理で語ることである。その上で自分が語ろうとしている客体をまっさらな目で見ることである。
残念ながら今の日本には「若者」を語る際にこの基本的な作法が身に付いていない方が右派にも左派にも多いものと思われる。
本書はこのようなスタンスから一線を画しており、その姿勢は高く評価したい。その上で限界点を指摘しておきたい。
まず本書のもとになったアンケート調査が2箇所しか行われていないので「日本の若者」のサンプルにはなっていないことである。だからこのアンケートの調査結果を日本の若者一般に押し広げることは出来ない。
次に、調査対象が16才から29才なので、他の世代との比較が出来ない。だから調査された地域の若者と、同じ地域の他の世代のどちらが規範意識が高いのかと問いに答えることは出来ない。
本書では1992年と2002年のアンケート調査を使っているおり、その意味では世代間比較と言えないこともない。しかし10年間というのは短すぎである。これでは結局のところ「今時の若者」で一括りにされてしまう恐れがある。これが30年前の若者層に対する調査結果と比較するというのであれば事態は相当に異なるのだが・・・・
本書の問題意識から言えば、同じ時点で世代毎に同じアンケート行い、どの世代が規範意識が高いのかを調べる必要があった。
しかしこれがアンケート調査の難しさであると言える。
ということで☆4つ。
題名に期待しましたが・・。
★☆☆☆☆
実証的なデータで検証―と言っても、
論の展開、データの扱い方がとても主観的。
学問的な若者論として読みたい方には
あまり参考にならないように思います。
若者に偏見を持つなかれ
★★★★☆
この本の長所
1、世間で流布している若者バッシングが大人側の偏見に過ぎないということを、青少年研究会の調査に基づいて論じているところ。
2、テレビゲームの登場人物に思い入れを持つ若者は、友だちが多い(p100)、若者全体の友人関係は希薄化していない(p144など)、若者の道徳・規範意識は衰退していない(第6章)など、世間で言われていることとは別の若者像をそれなりの根拠を持って提示しているところ
この本の短所
1、調査のサンプル数が少ない(東京都杉並区と神戸市灘区、東灘区のみ。もっとも、理由が書かれているので好感は持てる(以前読んだ岡田尊司氏の『脳内汚染』とは異なる))。
2、コラム部分が難しい(統計学の知識を授けようとしているが、一読ではよくわからなかった。もっとも、私の知識不足かもしれない)。
結論
長所星5つ。短所で星1つ減らして、星4つ。
冷静な現代若者像を知るために。
★★★★★
脳内汚染されているおじさん、おばさんのネガティブ若者妄想や、またはそれらに対する反発から嫌悪感を剥き出しにしたものとは違い、一歩引いて冷静に今の若者の在り方を題名どおり実証的に検証している良書です。
きちんと統計を用いた資料に基づいて俗世に蔓延るイメージを一つ一つ俎上にのせていくさまは小気味よいものがあります。あくまでもデータ分析に基づく解釈を外れないため、読み物としてはお上品という印象もありますが、それだけに妥当で冷静な結論となっていてそれら(お読みいただきたいので結論は記しません)を否定することはできません。
とりわけ友人関係は希薄化したのか、アイデンティティは未成熟なままなのか、道徳意識は欠如しているのかといったそれこそマスコミを筆頭とする無責任な言説が既に既定のものとして扱っているテーマに関する調査は必読です。環境が変われば人のあり方も変わるそれは良いとか悪いとかではなくて致し方ないことただそれだけのことということを冷静に受け止められることになるでしょう。