旅立ちの物語
★★★★★
東欧系ユダヤ人イラストレイター(自称)、モーリス・センダック。
マザー・グースの詩からの引用で名付けられた本書は
明らかに大人向けに書かれた絵本であろう。
センダックの絵本のテーマとして、たびたび
(自ら「リグレッション」と名づける)母胎回帰が採り上げられる。
しかし本書の主人公犬のジェニーは「もっといいこときっとある」
と始めた、イニシエーションとも受け取れる冒険から帰ることなく
なんとご主人のもとに戻らない決心をするのだ。
三部作を中心として、家族という手のひらの中の子供の成長を
描いているセンダックだが、本書ではその先の真の自立を
大人への旅立ちを物語ろうとしている。
繊細な絵も美しい佳作である。