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政治主導はなぜ失敗するのか? (光文社新書)

価格: ¥819
カテゴリ: 新書
ブランド: 光文社
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概ね公正な政治家と官僚のあり方論 ★★★★☆
脱官僚・政治主導と言って華々しく登場した民主党政権の1年を追い、参院選直前に鳩山氏が退陣したころまでの状況を踏まえて執筆されている。

本書では、今までの官僚が全てを握っているかのようなイメージは誤りであり、官僚の力が落ちていくことは間違いないとしている。

一方で、脱官僚をして民主党が何をするのか見えない。政治主導とは、首相主導なのか、内閣主導なのか、党主導なのかさえ分からない。民主党は官僚を敵視するあまり、官僚の協力を上手く得られないだろう。省庁に乗り込んでくる政務三役が威張り散らすばかり。と事細かに事例を挙げて指摘する。

政治家がすべてを決めるというなら、きちんと決めてくれ、という官僚の悲痛な叫びも代弁しているように思える。民主党が自分達で政策とその優先度を決めない限り、現在は官僚が一歩も動けない状態にある。人的資源の無駄使いである。

私見だが、これだけ官僚を悪役にしてきたのだから、今後は官僚を目指す優秀な学生は減るだろう。それでいて政治家は国家を運営する力量があるのか。国民は自分の意思を明確にし、自分達の選択を自分達の責任とする覚悟があるのだろうか。

著者と政治信条は違えども、本書の内容が優れていることに異論はない。
民主党政権に批判的な立場で記述 ★★★★☆
 この本は、従来言われてきた「官僚支配」と、民主党政権の「政治主導」との関係を記述している。
 主な主張は、 
(a) 官僚には「官僚支配」というほどの強権的なパワーはなく、むしろさまざまな利害をもつ主体間の地道な調整役担ってきたこと、
(b) 一般には官僚支配というが、その法的・制度的根拠はなく、民主党の政権運営次第で簡単に官僚支配は崩れてしまうこと、
(c) 民主党政権では、政策決定プロセスから官僚を除外し、政務三役を中心とした決定がなされるようになったこと、
(d) しかし、民主党政権の目指す「政治主導」は「官僚支配」を排しただけでは達成されないこと。むしろ、民主党の議員が地道な調整ができるとは考えられないこと、
等について記述している。

 私は、民主党政権発足以降、「民主党は『政治主導』ばかり言うが、政策決定プロセスより政策の中身で勝負すべき。政治主導で普天間のような混乱を起こすのであれば、行政の手堅い運営のほうがまし。」と思っていた。
 また、「政治主導というが、専門性の高い現代行政を個々の議員が隅々まで理解できるのか」とも思う。(これは、議員の能力の問題ではなく、1人の人間がカバーできる専門分野はどんなに優秀でも限りがあるということ)
 さらに、「『政治家は民意を把握している。一方、行政(公務員)は民意を把握していない』と言われているが、本当にそうか。たとえば、公務員も日々住民の声(苦情)を聞き、実情もそれなりに把握しているのではないか」とも思う。
 要は、政治も行政もそれぞれの専門性・強みがあるのであって、一方的な官僚・行政バッシングは、あまり生産的ではないと思う。

 著者は、旧労働省で勤務した経験があることから官僚に好意的であり、民主党に批判的な立場で本書を書いている。官僚に過度に肩入れする姿勢はやや気になるが、「政治は民意であり善。官僚は悪。」という単純な図式ばかり主張される中では、その意味を問い直す意味は大いにあると思います。
官僚主導が消え、調整役も消えた民主政権 ★★★★☆
官僚の権力の源泉を利害調整に見る、著者の政策決定プロセス論。政策決定のアクターが誰も皆やって欲しいことを押し通そうとする中で、官僚は議員を含め、誰もやりたがらない下請け仕事を引き受けることで、人脈を広げ、自分たちに有利になる仕掛けをすべり込ませてきた、という仮説を元労働省キャリアだった著者の経験も交え論じている。今のところの民主党は各種団体の陳情を幹事長室にする、記者会見を政務三役に限るなどネットワーク力を削ぐことで「官僚主導の打破」には成功しつつあるが「政治主導の確立」はどうか…政治主導すべき政治家大臣はスタンドプレーに走り、調整役がいなくなり、普天間のように政策が決まらない、大臣がトップダウンで決める場合はすぐ決まるが決まっても実施部署で混乱するなどの弊害が生じるのではないか、と見る。

政策決定という研究に基づいたしっかりとしたロジックに著者の経験、鳩山内閣での出来事が交えて記されていて読みやすい。9月の民主党代表戦の結果でまた変わってくるかも知れないが、民主党政権における政官関係の透視図を与えてくれる本だと思う。

余談だけど、安倍を「安部」って誤変換、相変わらず多いよなあ(p132,133)…
異色のスピンアウト官僚による現代官僚論であり鳩山民主党政権分析 ★★★★★
 経歴が異色な著者である。
生年
1964年 奈良県大和郡山市に生まれる
学歴
1988年3月 同志社大学文学部英文学科卒業
1996年5月 The School of Public Policy, The University of Michigan卒業 (公共政策修士)
2003年3月 新潟大学大学院現代社会文化研究科 (博士後期課程) (経済学博士)
職歴
1989年4月 奈良県大和郡山市役所
1990年4月 旧労働省入省 (国家公務員T種試験行政職)
1994年7月 人事院長期在外研究員制度でミシガン大学院留学
1996年7月 旧労働省職業安定局高齢・障害者対策部企画課総括係長
1998年6月 旧厚生省生活衛生局指導課課長補佐 (法令担当)
2000年4月 新潟県総合政策部情報政策課長
2003年4月 厚生労働省大臣官房国際課課長補佐 (ILO条約担当総括)
2004年4月 公募により兵庫県立大学 大学院 応用情報科学研究科 助教授に
 「脱藩官僚」ほど政治臭はせず、首都圏有名大学教員ほど権力志向も無い。「公正な自由市場」で通用した自信が無理の無い論述を生んでいる。
 民主党が唱えた「政治主導」「脱官僚支配」の中身を吟味し、現在霞が関とその周辺で繰り広げられている価値を生まない攻防戦の意味を歴史的に位置づける。
 特に出身官庁である厚生労働省には、今なお独自の情報ルートを持っているものと思われる記述がある。
 日本政治における「拒否権プレーヤー」の比重の推移に関する分析は、肯ける。また著者オリジナルとする「切る政治」「生み出す政治」「恵む政治」「分配する政治」に関しては、更に細部を書き込んで欲しかった。
 過大な「官僚支配の残像」との「戦い」にエネルギーを費やする一部政治家の消耗戦に、最終章の「民主党のための「政官財学情操縦マニュアル」」を贈っている。
 著者の論理に登場する「日本政治の磁場」の変化を生み出せるかが、今後の政治を前進させる上での課題となるのであろう。
 「右であれ左であれ我が祖国」であり、今後いかなる政権が成立しようとも、何らかの官僚組織が必要である限り「官僚操縦マニュアル」と利害調整システムとその担い手が必要となる。その現代的展開を考える上でヒントになる一冊です。
官僚の力を削いでみたけれど ★★★★★
官僚主導が問題であるとして、政治主導を実践しようとしたけれど、日本人はコンセンサス重視で、「拒否権プレーヤー」が様々なところに存在しており、政治改革はなかなか進まないという現状分析を、元官僚である著者が示しています。
新聞などから得る情報は「点」の情報ですが、それを「線」にし「面」に伸ばし、立体的に解説してくれているのが本書といえるでしょう。問題点の抽出に留まらず、その解決策も提示しているのが素晴らしい。政治の現状を理解するため、国会の先生方の教科書にもなるのではないでしょうか。