中国仏教の壮大な遺産
★★★★☆
中国隋唐時代といえば、日本では遣唐使の活躍で片付きそうな、また最澄・空海の入唐求法を知っていれば事足りる如くに思われている。しかし、その最澄・空海が持ち帰った仏教も、もちろん中国仏教のほんの一部でしかない。この『新アジア仏教史』第7巻は、日本人のそうした安易な中国理解を改めるに有益な一冊と言える。インド仏教が中国に渡り、大乗の教学を中心に研究が深まり、中国独自の仏教文化が確立された。満開の牡丹花のような仏教全盛の時代、それが隋唐だと思い知らされる。禅、華厳、浄土、密教など各宗派の話題がまんべんなく記述され、各章読んでいて飽きない。とくに禅宗における師匠と弟子の因縁バトルは面白くて分かりやすい。それら全体は、いかに中国の皇帝はじめ大衆がインドの根本佛教を勘違いしたか…という歴史でもあろう。そうした勘違いは、しかし莫大な遺産を我々にもたらしたこともまた明白である。その一方、唐代の皇帝は道教と佛教を交互に信じているようで、代替わりのたびに弾圧と保護がめまぐるしい。王朝の系図などもう少し欲しいところだが、図版の多さは見ているだけでも飽きない。中国編はまだ完結していない様なので、出揃ったら各時代ごとに読み比べてみたい。