好篇 でも文庫になってから買ってもよかったかな?
★★★★☆
米澤穂信さんの「さよなら妖精」を近年のベスト1に挙げるほどファンなので
読まずに死ねるか!の勢いでイチもニもなく飛びつきました。
明らかに某市をモデルにしており、それぞれの事件が起きる場所も実際の場所
をイメージしているご様子。地図もしかり。地元民はそれだけでも嬉しいので
すが「さよなら」の中で一番好きなキャラが三度登場するのが最高に嬉しい。
全二作同様、ファンである読者目線で見ればつらい現実を生き抜いている彼女
は、ファンが望む彼女のその後ではありませんが、本作のラストは一番救われ
ます。
日常の謎を得意とする作者が、この三作ではまるで警察小説のような展開。
今後もちょくちょく発表されると思いますが、全能である彼女が唯一得ていな
い「さよなら」の補完を、ハッピーエンドを望みます。作者が読んだら喜んで
逆の展開を書きそうでコワイですね。
他の作品はあまり興味を引かれるものがなかったので、本作品が文庫化されて
から購入してもよかったかな?
怖いけど行きたくなる蝦蟇倉市!
★★★★★
架空の街・蝦蟇倉市を舞台にした短編集です。
若手作家達の競作と聞いただけでもワクワクしますが、
”この街では不可解事件が年に15件以上おこる”という設定が、
ミステリー好きにはたまりませんでした。
どの作品も、”大きな密室”で起こっている事件のような、
不思議な楽しさも味わえました。
なかでも、村崎友「密室の本」、越谷オサム「観客席からの眺め」
の2作品を、特に面白く読みました。
若い作家さん達だからでしょうか、登場人物達も若く、
犯罪の内容・結末も若さ故の切ないものが多かったです。
わかりやすい作品ばかりなので、
ミステリー初心者にもお勧めしたいです。
米澤穂信の短編は『さよなら妖精』の続編
★★★★☆
収録された六編の中では、技巧と洗練で、米澤作品が一頭地を抜いて
いますが、越谷作品の容赦のないえげつなさも強烈な印象を残します。
■「さくら炎上」(北山猛邦)
人付き合いが苦手な高校一年生“私”のただ一人の友達である陽子。
そんな陽子が、春休みの最初の日に、同じ学校の男子と会っていた。
その後彼女は、思いもかけない行動に出て……。
学校という閉鎖的な〈場〉における思春期の閉塞と不安がもたらす悲劇。
■「毒入りローストビーフ事件」(桜坂洋)
××を下敷きにして異様なシチュエーションを描いた作品。
■「密室の本――真知博士 五十番目の事件」(村崎友)
アパートの密室の押し入れから消失した大量の本の謎。ラストの
どんでん返しで明かされる副題にまつわるホワイダニットが秀逸。
■「観客席からの眺め」(越谷オサム)
「いい友達」関係から踏み出せない元吹奏楽部員の“僕”と陽子。
二人は、人気者だった吹奏楽部の顧問が殺害された事件について
相手には打ち明けることのできない秘密を、それぞれに抱えていた……。
■「消えた左腕事件」(秋月涼介)
逆説的な真相と意外な犯人。
■「ナイフを失われた思い出の中に」(米澤穂信)
幼い姪を殺害したとされる少年の手記から、少年の心理と事件の真相を
読み解くという作者お得意の手法が採られた暗号ミステリ。そして、×を
嚆矢とする、《法と正義》というテーマに基づく社会派ミステリでもあります。
『さよなら妖精』に登場した太刀洗万智がルポライター
として事件にかかわる、《ベルーフ》シリーズの短編。