悪口雑言に文化を探る:これぞ「残したい日本語」
★★★★★
痛快な研究である。古今東西の「悪口」について文化的側面から考察しているのだが、日本のさまざまな悪口とそれにまつわる歴史的な掘り起こしが特に面白い。「母開」など他ではまず目にしない単語が並び、当時の世相や政治局面の反映が分かりやすく語られている。筆者も巻末に述べているように、最近の「美しい日本語」的な潮流は、綺麗な表の側面にのみスポットをあて、悪口のような負の側面をないことにしようとしているように思える。しかしこの書物を繙いてみれば、悪口の豊饒な文化が見えてくる。悪口を実際に言うことを奨励するわけでは勿論ないが、言葉狩りをする前になすべきことがここに示されている。