私の好きな作品
★★★★☆
「蘇る金狼」「野獣死すべし」「汚れた英雄」と並んで私の好きな大藪春彦作品である。医者は徹底的にデフォルメされて悪役に仕立てられているが、誇張はあるものの、昔の医者はこんなものであったろう。今の医者、公務員、政治家も程度の差はあるにしろ、ほぼ同じではないだろうか。この作品はハードボイルドというよりも医療の裏側を暴露した小説だ。医療の裏側を暴いたという点では「白い巨塔」に並ぶかも知れない(そこまでいかないか)。売る側と買う側、接待する側、される側、賄賂が横行する小説は面白い。医者のハチャメチャぶりの描写は新堂冬樹の小説に通じる物があり、新堂冬樹が好きな人はこの小説は間違いなく好きであろう。
密猟のシーンが何回か出てくるが、ハードボイルドが好きな人は、ここを読めば満足するはずだ。イノシシや鹿をパチンコやボーガンで仕留めるシーンを私は好きだ。実際自分でもパチンコでイノシシを仕留められるんじゃないかと思ってしまう。
復讐シーンはもっとページを割いて欲しかった。大半がハチャメチャに医者から虐められるシーンばかりなので、もっと後半でシニカルに仕返しをちゃんとして欲しかった。
上巻を飛ばしても
★☆☆☆☆
緻密な取材。渾身の超大作。手に取った。こんなに厚みがある。期待は膨らんだ。いままで以上の傑作に逢えるのではないかと。
読んだら・・・・・・・。
取材で聞いたことを作品に活かしたかったのか、本書(上巻)は驚くほど主人公は土下座するばかり。そして腐りきった医師たちの描写がつく。
それで、主人公・石川が銃右手にハンドル左手、なんてことにはならない。要は、前述の描写が永遠と続くワケだ。550ページもの間。土下座の550ページ。
その間、石川は全く医師たちに反抗しない(内心では罵ったりしているけれど)。なんだか本書を読んでいる読者(拙者も含む)まで退屈なシーンの連続にイライラしてくる。
要は、上巻を飛ばしてもあまり障害というものはないということ。ホント同じシーンの連続なのである。
ということで、下巻に。