鴨居さんのものづくりの本質をがっちり掴んだ、その「下着をうりにゆく」やり方が、素晴らしすぎる。それはもう商売を超えて、ロマンチックですらある。解説にも書いてあるように「鴨居は、現実の根っ子をつかんで、そして夢見ていた」。それが、現実の前でたんなる夢で終わるのかというと、そうではない。
この本を読むまで僕も忘れていたのだけど、「正しいこと」はやっぱり現実よりも強くて、美しいのだ。それは鴨居さんのムダに飾り立てない文章の美しさにも現れている。たぶん、僕はこれから何度もこの本を再読することになるだろう。
例えば、鴨居さんが新聞社時代に書いたこんな文章がサラリーマンの僕には沁みる。
「彼らは社を憎み、社を愛し、仕事を憎み、そして仕事を限りなく愛していた」
いまどきのベンチャーの社長とか読んだらどう思うんだろう?「お客様を目かくししておいてその間にもうけようとするレベルの低い商売」が多すぎるぜ!