りんごの季節
★★★★★
大陸から帰還した父が、毎年リンゴの季節に語る、
まるで昨日のことのように鮮明な、遠い日の思い出。
人々の心の葛藤、人情の機微に触れ、
なぜ人々は戦わなければならなかったのか
という疑問をいっそう強く感じました。
繰り返し読めば読むほど深い内容で
すばらしい絵にも心打たれました。
戦争には二つの視点がある
★★★☆☆
戦争に関する著作はこの世に星の数ほどありますが、本書は短い文章ながらも、戦争の二つの視点を描いていたという点で大いに評価できると思います。戦争に関わる両側のした行為を知って初めてその戦争を客観的に評価できるスタートラインのようなものに立てると考えるからです。他のレビューアーの方も述べている通り、メッセージ性、紅玉という赤いリンゴの象徴するものなどはどれをとっても一級品であると言えます。
絵にも鮮やかで迫力があり、それでいて紅玉を実らせる田園風景にも爽やかさも感じることができました。絵画に関しては素人ですが、とても印象に残る、文章とマッチした良い絵だろうと思います。
しかし私が気に入らないのは絵そのもの、文章そのものではなく、絵と文章の組み合わせです。対象高学年ながらも絵本という形態をとっているのならば、その両者を合わせた印象を受け取ることも必要となってくるはずです。
ところが、中国人や韓国人の労働している場面の絵はモノクロで描かれ、他の絵と比べてややショッキングなタッチであるのに比べて、日本側の戦争描写をしている「牛も馬も、そして、あらゆる作物を、あたりまえのことのように奪い取っていた。」という文章では雲と空、草原が広がる風景―中国の広大な国土を描いていることは想像できます―が描かれていました。
これでは受け取る印象がまるで違う。絵によって意図的に肯定的なイメージを日本のしたことに対して植え付けているようなものです。これでは到底、公平公正な戦争の描き方とは言えないと思います。そういった意味で、私は星三つをつけさせていただきました。
日本とアジアについて子どもと考えることができました
★★★★★
首相の靖国参拝や歴史教科書のことがニュースでながれるたびに、アジアの人々の反応をこどもにうまく説明できないでいました。この夏、小5の娘がこの本を読んで、底に渦巻くものの深さををほんの少し感じたようです。妹にすすめられ、中3と高2の息子もめずらしく絵本を手にとりました。
こどもが一人で理解するには難しい本かもしれません。身近な大人の手助けが必要かもしれませんが、時にはそんな絵本もいいなあと思いました。
大人も楽しめる絵本
★★★★★
私は林檎農家の近くに住んでいます。なので、林檎農園の話は隣でも起きていたかもしれない話です。
強制連行とか、人間性とか。戦争によって起きた問題を、シンプルに奥深く描いていると思います。
新聞で広告を見たのですが、その時点でストーリーが予想できたにもかかわらず、胸に迫るものがあるのはなぜだろう。
子どもができたら読んであげたい本です。
強制連行って、こんなに近くで、こんなに沢山の人がいたのですね。子どもにも教えてあげなきゃ。
日本各地に残る強制連行の歴史をわかりやすく絵本小品に
★★★★★
▼児童文学作家 後藤竜二さんの最新刊です。内容は、以前に出版された『九月の口伝』のなかの1つの作品です。その作品を鮮やかな絵本にされ、出版されたのがこちらの本です。
▼1930年代から日本各地で、鉱山やダム工事、鉄道工事などで多くの強制連行された中国人・朝鮮人などが日本に連れてこられました。この本の舞台となっている北海道美唄市も、そんな炭鉱の街のひとつです。
▼作者は、終戦当時2歳。終戦後のエピソードです。父から何度も聞かされた話を本にされたものです。
▼緊張感のあるストーリーで、短い話なので、すぐに読めます。
▼是非、小学生~中学生~高校生~大学生など、子ども達に読んで欲しい本です。
▼作者が、作家となるきっかけとなったエピソードだということです。
▼他におすすめは、『野心あらためず』『14歳』です。