イギリスの教育から見えること
★★★★☆
イギリスの教育といえばパブリックスクールがよく紹介されている。それに対して、本書では主にシックスフォームと呼ばれる学校を中心にイギリスの教育が論じられている。シックスフォームとは義務教育を終えたイギリスの学生が大学に入学するために入る学校であり、筆者は実際に自分の子どもがシックスフォームに通学した経験を通じてシックスフォームの特色を紹介している。
シックスフォームに通う学生はちょうど日本でいう高等学校の学生に相当するが、シックスフォームでの教育は日本の高等学校の教育とは大きく異なっている。日本の教育がどちらかといえば知識の伝達に重きを置いているのに対し、シックスフォームではものの考え方を身につけさせることに重点を置いている。その教育の具体的方法は本書に詳しく紹介されているが、日本では大学や大学院で行われているような教育が行われていると言えるだろう。
日本の教育に慣れた私たちにとってこのイギリスの教育はびっくりするような内容であり、日本の教育の問題を考える上でも非常に参考になると思う。それだけではなく、本書ではシックスフォーム以外の学校についても簡単に論じられており、イギリスの教育を考える上でも非常に便利な本だ。筆者の教育に対する議論もイギリスの教育を過度に理想化することなく説得的な議論を行っており、非常に良い本だと思う。