ジョークと憂国
★★★★★
この本に学術書と同じレベルの評価を与えていいのかどうか少し悩みました。
これはジョークを使いながら、日本の現状を批判的に、ユーモラスに読み解くものです。
あまり厚い本ではないのでサラッと読めます。
もう少し書き込んで欲しかったのも本音です。
しかしながら、落合氏の憂国の想いは、確かに今日の日本人に当てはまるようにも思えます。
序盤で割と辛辣な日本論を展開する氏ですが、問題意識は日本の若者への希望の裏返しと感じました。
一つには、やはり、日本人としての自信を持って欲しいのだろうと思います。
そのためにまず、コミュニケーション能力を付ける必要があるのでしょう。
そのコミュニケーションの手段の一つとして「ジョーク」を挙げております。
ジョークはニヒリズムとギリギリ紙一重のところで生まれるものでしょう。
「今」が辛くとも、ジョークで乗り切って欲しいという気持ちが込められていると解釈しました。
もう一つは、教養を付けて欲しいのだろうと思います。
時折、古典文学、哲学、詩の表現などについて触れていますが、
若者にとって何よりも教養が大事だと訴えているように思われました。
確かにジョークにはユーモアが必要ですし、そのユーモアも教養で磨かれるものだと思います。
モラルを追求が叫ばれている今日の世界にあって、こういう固くない文化論も面白いですね。
日本の良さを確り認識する
★★★★☆
「恥の殿堂」の続編という位置付けの本書であるが、内容は日本の現状を憂うばかりではない。
これまで落合氏は日本の現状を記す場合、主に(自分が留学した)米国との比較でその不足点を厳しく指摘するのが常であった。
しかし、本書ではウォシュレットを例に挙げて、(珍しいことに)日本人の清潔さに対する世界にない意識の高さを褒め称えている。
また、(世界にない)居酒屋などは、日本の大きな武器となる、と指摘しているのには驚いた。
政治や文化、若者に対する痛烈な批判は他の著書でもかなり繰り返し述べられていることであるが、各章には多くのジョークが挿入されているため、挫折せずに読了することができた。
個人的には、政治のレベルを憂いている部分に強く共感した。
政治家を選ぶのが国民、と言われればそれまでだが、政局を正確に理解するような情報があまりにもお粗末な気がする。
お手頃な価格でお薦め。
自分で考えて自分の意見を持て
★★★★☆
トイレに始まりトイレで終わる本です。
主として日本人を対象とした笑うに笑えないジョークを紹介し、そこに潜む国民性やねじれた状態を解説しています。政治、文化、若者、マスコミなど日本人にしか通用しない、つまり国際的な「無知」をわかりやすく示しています。
選挙などでも昔は判官贔屓という言葉がありましたが、最近は優勢な方になびく傾向があるともいいます。実際、私の職場でも「マニュアル人間」「素人上司」などがいます。自分で考えず、周囲を気にして態度を決めていては停滞するのみなのですが、彼らにはその自覚はありません。
本書は何とかこの国を良くしていこうという警鐘なのでしょうが、私も若くはないので消極的に「期待しないこと」を心がけています。