現代ラオスの政治・経済について、成立の経緯やその後の流れがよくわかる本
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現在、メコン開発・南北回廊・十字路などのキーワードで注目されているラオスについて、成立の経緯や政治的立ち位置も含めて、もっと深いところから理解できる本。総量300万トンの爆弾を58万344回(これは米軍からの爆撃回数)にわたって爆撃されながら、ダイナマイトで即席に切り開いた洞窟に病院や学校もしつらえつつその洞窟で政治的・軍事的会合を重ねた末に、政権が樹立されたことを踏まえれば、単に経済面だけからホットな話題につられて注目するだけでは建設的利益を得られず痛い目にあうだろうことは明白だ。ラオスやメコン地域に関係しているビジネスマンは、本書を読んでからラオスにおける職務のデザインを考えれば、非常に実り多いだろう。
*2010年10月14日追記*
ラオスの経済的な面について、本書で述べられているもののうち印象にとまった部分を挙げる:
・ラオスには豊かな鉱物資源があるが、重工業がなく、この部門に専門的人材と民間投資が不足している(p.136)。
・観光は特段の資格のない若者の雇用を創出でき外貨を獲得できる部門であり、ラオス政府は質の高く出費の多い文化的観光の発展を期待している(p.259)。
・経済発展を阻むものとして、安全飲料水への低いアクセス(55%)、地方での電気への低いアクセス(47%)、低い成人識字率(50%、女性は39%)などがある(p.260-261)。