力強い絵本の土台の一つを知るために。
★★★★★
1938年作のスコットランドを舞台にした、ちょっと愉快な絵本。
ギリスの母親は谷暮らしで牛を飼っていました。父親は山暮らしで、鹿を撃って暮らしていました。
だからギリスはいつか、谷か山かどちらかで暮らさなければなりません。そこで、一年ごとにそれぞれの土地で暮らしてみます。
谷では、牛飼いの仕事。でも声が小さいと牛が集まりません。そこで大声を出したギリスの肺は大きくなっていきます。
山では静かにして鹿を待ちます。だから息を止めていなければなりません。いつのまにかギリスの肺はたくさんの空気を溜めることができるようになります。
さて、時は流れ、谷で暮らすか山で暮らすか決めなければならなくなります。困ったギリス。
さて、かれはどうするのでしょうか?
お話のおもしろさは申し分なし。ロバート・ローソンの絵も、まだ絵本とも挿絵ともつかない微妙な描き加減が、今ではもう不可能な雰囲気です。
今、こんな絵本を作る意味はないでしょうが、今この絵本を出す意味はあります。力強い絵本の土台の一つを知るために。