回虫に対する熱意が伝わる
★★★★☆
日本で数少ない寄生虫学者である著者が回虫に関する薀蓄をユーモアを交えて語ったもの。普通、学者がこの類のエッセイを書くと硬くなり過ぎるか、逆に浮いた話になってしまうのだが、著者の天分か、硬軟交えた程好い読み物になっている。
まずは著者の回虫に対する熱意に打たれる。これは回虫の存在が近年減った事に対する危機感の裏返しでもあろう。私が小学生の頃はマッチ箱を用いた検便を行なったものだ。存在が少なくなった物は、顕在化した時に大きな災厄をもたらす。これに対する警鐘が至る所で鳴らされている。また、上述した通り学術的な面一辺倒でなく、それを程好いユーモアで包んでいて読みやすい所が良い。
やはり、一芸を追求する方は情熱とユーモアを兼ね備えているものだと感心した。
虫と糞のコラボレーション
★★★★★
寄生虫について、明るく前向きにエッセイ調に話が進むので、大変おもしろい。汚いと思わずに、考え方を変えて臨んでください。
学問のススメの中で登場した先生だったような気がします。海外に行き、糞を集めて、中の虫を調べ上げることが面白いです。虫の意義も十分にあるものの、昆虫学者は多くいますが、このような研究をしている先生は少ないように思います。目黒にある寄生虫博物館のようなものあるようで、結構人気があるようです。
寄生虫への愛が毛穴からあふれている
★★★★★
藤田先生を初めて見たのはNHK教育の寄生虫講座だった。
そのとき、自分の腹の中で飼っていた寄生虫への愛情あふれるサマや、イカ刺しの中にいる寄生虫を見つけて喜ぶサマに、心を鷲づかみされたものだが、著作にもやはり鷲づかみされた。
やはり何がどうだろうが、最後は愛なのである。
「僕はツカツカと歩み寄って、彼女の左手をむりに開いた。カイチュウが出てきた。かわいそうに、三十センチほどのカイチュウは彼女の手で無残にも絞め殺されていたのだ!僕は彼女の介抱そっちのけで、もっぱら握りつぶされたカイチュウの方に気を取られ、なんとか息を吹き返せないかとカイチュウに人工呼吸などを試みたりしていた。」
トイレでお尻丸出しで倒れていた女性を助けた時の叙述である。
誇張はあるだろうけど、とにかく寄生虫への愛が全身の毛穴から溢れていることは確かだ。
こういうところが研究者のラブリーなところなのだが、距離を置いて接しようと決意させるところでもある。
必ずどんな専門家でも見つけてくる脅威の人脈を誇る『探偵ナイトスクープ』でも藤田先生は登場していたが、辻調理師学校のあの先生(名前忘れた)のようなレギュラーになるのは難しそうだ。
容姿も物腰も、とっても常識的だもん。
寄生虫がよくわかる
★★★★☆
今まで寄生虫は気にも留めない存在だったけれどこの本を読んで良くも悪くも注目すべき生物なのだと思いました。虫嫌いな私にとっては困る部分もあったが、健康のことを意識することができ色々と学ぶことのできた一冊となりました。
寄生虫のことを知ってもらおうとする熱意が感じられる
★★★★☆
この作品が書かれた頃、寄生虫学は寄生虫の撲滅とともに衰退の一途を辿っており、藤田先生は寄生虫学の世間への浸透も込めて本作をお書きになった感がある。
藤田先生にとって幸運だったのは、グルメ指向の隆盛により、有機野菜が流行り始め、それに伴って絶滅寸前であった寄生虫が日本で息を吹き返した時期と重なっていたことである。
最近の作品を読むと、先生の存在も一定の評価を得られた安心感からか、書いている内容にもある種の余裕が感じられるが、本作においては、一般人に寄生虫の特徴や怖さ、有用性を知ってもらおうとする熱意が感じられる。