[捕物帖=謎解きミステリ]への原点回帰
★★★★★
江戸情緒の描写や人情噺が主眼となってしまった捕物帖を秀逸な謎解きミステリであった「半七捕物帖」の原点にもどす試みと、不可能犯罪をアクロバティックに、あくまでも論理的に解決する都筑流モダーンディテクティヴ・ストーリーの実践を両立させた驚嘆すべき都筑道夫の最高傑作シリーズにして久生十蘭の「顎十郎捕物帖」と並ぶ捕物帖の最高峰。
いささか氾作された感のある氏のシリーズキャラクターたちの中でも砂絵のセンセーとその長屋の仲間たちの生き生きとした造形は特筆されるべき存在感。そして細緻を極める江戸風俗の描写も並の専業時代小説家の及ぶところではない。
凝りに凝った新保博久氏の解説も読み応え充分の素晴らしい復刊。