殺人ぬきでばたばたと人が死んでいく斬新な非ミステリー
★★★★☆
内容紹介にあるとおり、平均寿命に近づいた老人たちが長生き競争のバトルロワイヤルを繰り広げ、最後に一人だけが残るというストーリー。ためらいもなく次々と人が当たり前のように死んでいくのに不自然さがまるでないのは、老人たちが主人公という設定がゆえ。にも関わらず、失われていく人生の重みをしっかり感じさせる人物造形は、謎解きに関心のない、人間ドラマ重視のミステリーファンにおすすめの一作。
生きとし生けるものへ
★★★★★
老人の酔狂のような始まりだったのが、後半から人が生きること、長生きすることなど、
生を受けてしまう人間の性を考えさせる内容で胸を揺さぶられる。
もちろん6人の長生き競争なので最後に誰が残るのか描かれていくが、
死を迎えた心の在り方がなんとも切ない。
亡くなる人だけでなく、その亡くなるまでの時間が人それぞれ臥せってしまうまで、
心はとても元気でその時を様々な感情を抱いて過ごす。
精一杯生きてない人なんていないと、基本的なことを思い出させてくれ、
後半何度も感慨にふけってしまった。
内容はファンタジーなのかもしれないけれど、
一度の人生を自分も全うしたいと思わせる本だった。
年寄りファンタジー!!
★★★★★
帯ロゴに笑ってしまい、読むことに決めた本。
結果は予想外の温かい、でも避けようのない別れのハナシ。
文体も文章のリズムも読みやすいが題材は決して軽くない。
物語は76歳の男性視点で進むのだが、未だ平均寿命のはるか彼方で生きる私にも、
人生でときどき触れてきた死というものをそれとなく思いおこさせる。
死を恐れる心、もっと生きたいと思いながらそれが叶わないと悟った人の思いと行動、
見守る人(この場合去り行く人と同級生なので身に迫る)の心。
それらが押し付けがましくなく、悲壮感ばかりを表にだすのでもなく、サラサラと描かれる。
一言で言うと幾つもの死を看取る小説といえるのだが、
『生まれてきてよかった。生まれたからには死ぬと分かっていても、やっぱりよかった。』
と、自分の最期にも思えそうな、捨てたもんじゃないありふれた人生の豊かさを教えてくれる一冊。