ちあきなおみ復帰へのシナリオ(?)
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まだまだ、ちあきなおみ初心者の私ですが、このアルバムはへヴィー・ローテーションで聴いています。
1曲目の「かもめの街」から、「冬隣」「役者」。完璧な流れに魅了されます。「冬隣」の「地球の夜更けは 淋しいよ・・・」から
内藤やす子の「六本木ララバイ」を連想してしまうのは、多分私だけでしょうね。それとロック好きの私には、「TOKYO挽歌」もお気に入りです。
このアルバムで作曲家として、3曲に名を連ねている杉本眞人氏は、「吾亦紅」ですっかり歌手「すぎもとまさと」として有名ですが、
この曲もちあきなおみに歌ってほしかったとか・・・。彼女の歌う「吾亦紅」も聴いてみたいですね。
それと、ちあき哲也氏が作詞し、杉本眞人氏に曲を依頼していると伝えられる「お帰り、ナオミ」は、一体いつ世に出るのでしょうか?
ちあきなおみと同じ、昭和22年生まれの秋元順子が、その地位をすっかり確保した現在、彼女の復帰の土壌は出来上がっていると
思います。その復帰のステージは、やはり年末の紅白歌合戦。すぎもとまさとが「お帰り、ナオミ」をステージで熱唱していると、
突然ちあきなおみが登場、一瞬我を忘れる観客、そして割れんばかりの拍手・・・。
そんな、夢のような出来事が実現したら、これ以上の幸せはありませんね。
きっと、そのステージではこのアルバムの曲が聴けるものと確信しています。
時代を超えた、ヘビーローテーション音楽
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88年にリリースされた、テイチク移籍後初リリースとなるアルバム「伝わりますか」。
すっごく楽しみにしていた復刻版です。
リマスターや未発表曲などのボーナスはなく、リリース時分ほぼそのままの形でのリイシューとなっているようで、これには賛否両論あるようですが、作品そのものを大事にした真摯な対応だと私は思っています。
彼女の後期の代表作「かもめの街」がこのアルバムで初めて収録されており、それを筆頭に「役者」「冬隣」「イマージュ」「伝わりますか」「TOKYO挽歌」「男駅・女駅」と、
(私を含む)現在の新たなファンを魅了した楽曲の数々がまさにこのアルバムに収められているのです。
参加された作家人は、御馴染みの方もいれば、チェゲアスの「飛鳥涼」の名前があったりと、意外なコラボレーションも実現させており、新鮮な印象を与えてくれます。
ライブ同様のグルーヴ感が心地良い「イマージュ」「TOKYO挽歌」などに聴いてとれるソウルフルな歌声は、
僕たち20代の若人にとってもすごく引き込まれるものがあり、とにかく「かっちょいい」のひと言。これまでもそうでしたが、彼女の多彩な音楽面が見事に発揮されたアルバムだと感じています。
約20年前の作品ですが、古さはまったく、本当に感じられません。
ファンの方は当然購入済みだと思いますが、これからちあきなおみに入っていこうとされる方や、購入を迷ってらっしゃる方は是非ゲットしていただきたい一枚。
ヘビロテ間違いありません。
ちあきなおみのマイペースとは
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このアルバムは、ちあきなおみがテイチク時代に放った最初のオリジナル・アルバム『伝わりますか』(1988.3.1)の復刻版です。
復刻に当たって、新たにリマスタリングを行うことなく、オリジナル・カット・マスターを使用したとのことですので、当時の音そのものが(音圧が少々低いのが玉に瑕ですが)再現されています。
1986年10月31日、ちあきなおみをビクターへ誘った、ビクター音楽産業の東元晃氏のテイチク社長就任が決定します。ちあきなおみもビクターとの契約満了を待って、1988年にテイチクへ移籍しますが、前年の12月15日にはマスコミを招いて、このアルバムにも収められている「かもめの街」や「役者」(更には、この後のアルバムに収録されている「紅とんぼ」や「君知らず」など)の新曲披露を行っています。その席で彼女自身がそれらの曲のレコーディング中であることを語っていますので、東元氏の社長就任が決まった時点で、ちあきなおみ自身も本格的な歌手活動への復帰を決断したものと思えます。そして、東元氏から復帰を望まれたときに、ちあきなおみは“マイペースでよければ”と一つだけ条件を付けて了承したそうです。
10年ぶりの新譜吹き込みですから、その意気込みたるや、推して知るべしです。そして、期待を裏切ることなく、復帰第一弾に相応しい、極めて内容の濃いアルバムとなりました。
ちあきなおみの代表作の一つに数えられる「かもめの街」を最初に持ってきたのは、極めて巧みな編集と言わざるを得ません。彼女の世界へぐいっと引き込むのに打って付けだからです。“歌”は“訴え”に語源があると言いますが、この彼女の歌には、その場の情景だけでなく、その女性の来し方・行く末までをも鮮明に浮かび上がらせる凄味があるのですから。
ちあきなおみは、レコーディング時には衝立を立てて、己が姿を他人の目に触れさせることがなかったといいます。そして納得の行くまで何度も何度も繰り返したといいます。そして新譜に限らず既存の曲にも貪欲に挑み、スタジオ入りを重ねたといいます。
私たちは彼女のシャイな、そして真摯に、執拗に、ストイックに、歌に取り組むその姿を見ることはできませんでしたが、そうして紡ぎ出された珠玉の歌の数々だけは、今もこうして手に取ることができるのです。