日本語系統論に一筋の光明が
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長く袋小路に入り、進展がないものと思われてきた日本語系統論に大胆に切り込んだ一冊。松本氏が各所で発表した論文を集めたもの。
「日本語の起源は○○語だ」式の主張や方法に限界があることを示したうえで、壮大かつ穏健なデータに基づく言語類型地理理論に基づくアプローチを提示する。結論として、人類言語の起源を視野に入れつつ、日本語を中心とした東アジア言語、環太平洋諸言語の先史時代を浮き彫りにする。膨大なデータに裏付けられた考察は説得力にあふれ、しかしまたそのさし示すところは知的興奮にあふれている。
詳細な点においては伝統的な考古学、個別語学、または考古学や人類学といった分野での検討やすり合わせが必要であろうが、全般として服部四郎の「日本語の系統」以来といってもよい画期的な名著である。