感情、結婚、快楽の三位一体。
★★★☆☆
野蛮な原始時代、フェリーニ監督の『サテリコン』で描かれたような酒池肉林の古代ローマ社会、肉欲を罪悪とするキリスト教の中世、裸体が氾濫するルネッサンスの絵画、サド侯爵にみられる貴族の乱痴気騒ぎと愛情よりも金銭や家柄で結ばれた結婚生活など、当時の風俗や結婚をイメージする姿は、あくまでも理想化された文学や芸術作品の影響であって、実際はどうであったのか、真相を本書が教えてくれます。現在の結婚が、愛情と快楽を伴なったものであるという社会に至る過程を、歴史の専門家と小説家らがインタビュー形式で答える内容は、性的に無知な新妻をなだめるために新婚旅行が流行したり、人前でキスをするのにはヨーロッパといえども20世紀まで待たねばならなかったなど、どれも興味深く、通俗的な歴史を紹介する桐生操氏のようなトリビアと面白さもあります。ただし、執筆者がフランス人のせいか、対象がヨーロッパ、近世以降はフランスに特化されるのが残念です。