アルバムの価値とレコード会社の怠慢を結びつけてはいけない。
★★★★★
これは、紛れも無い傑作ジャズ・アルバムだ。
ライブ・レコーディングでこの完成度は、素晴らしい。
しかもアイリーン・クラールの絶頂期に、日本で録音された音源とくる。
伴奏アラン・ブロードベントのピアノだけでも聴くに値する、二人が奏でる最高のインタープレイ。
レコード会社の対応に文句があっても、☆ひとつと書けば、事情を知らない人は
アルバム自体の出来が☆ひとつと思うでしょう。
かつて同じことが、カーメン・マクレエの『グレート・アメリカン・ソングブック』で起こった。
当時ジャズ評論界の第一人者・油井正一氏が、日本盤を出さなかった当時のワーナー・パイオニアに抗議して
これに票を入れなかったため、(他の批評家が追随して)「スイング・ジャーナル」のボーカル賞を逸したのだ。
(結局、盛りをとうに過ぎた、エラ・フィッツジェラルドの『カーネギーホール』が賞を獲得。
あれから40年経過しても、2作を聴き比べればどちらが上か、素人にもわかる)
SJの賞を取らなかった、カーメンの作品の価値が下がることは全くなかったと思うが、
これこそ“贔屓の引き倒し”の典型ではないか。
会社は会社、作品は作品。そう評価しないと、アイリーンの名作が世に埋もれてしまう。
彼女のベストレコードではないけれど、☆5つに値する出来だ。
若くして、天国に召されたジャズ。ボーカルの名花、アイリーン・クラールの
魂のこもった、歌心満点の、繊細にしてジャージーな、ライブ・イン・ジャパンをご堪能あれ。
「真の」完全版を望む!!!
★☆☆☆☆
最初にお断り。
本作に含まれる「音楽」は文句無く5☆だ。
アイリーンのヴォーカルはもとより、名手アラン・ブロードベントのピアノが素晴しい。このような演奏が日本で記録されたというのは、世界のジャズファンに誇っていいだろう。
では何故、☆ひとつか?
それは、せっかくオリジナル・マスター・テープが発見されたというのに、二度演奏した曲は、1回しか収録していないからだ!
つまり「完全版」ではないのである。
1977/7/20と21の二日間にわたってABCホールで録音されたが、ライナーによると、初日18曲、二日目14曲、合わせて32曲が演奏されたとある。しかし、本作に収録されているのは21曲に過ぎない。確かに初版より10曲も増えているが、「完全版」でないことには、変わりはない。
2枚組にすれば、売れないと思ったのだろうか?
しかし、(私も含めて)本作に手を伸ばしたファンの99%が、曲がダブって2枚組になって4千円くらいでも、購入した事であろう。
マスターテープに著しい欠損があってCD化にはどうしても適しないとか(事実、一部に音のタワミがある)、最初からテープを回していなかったというのならともかく、どうしてこんな不完全な形でリリースしてしまったのだろう?
レコード会社の猛省を促したい!!!