30年ぶりの「蒼い時」
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山口百恵が引退したとき、わたしは25歳だった。
「蒼い時」もベストセラーとして大きな話題になっていた。
本好きのわたしには珍しく、そして彼女のファンであったにもかかわらず、「蒼い時」を購入しなかった。本屋で立ち読みしただけだった。
わたしには彼女の引退がショックで、認めたくなかったんだと思う。
わたしが立ち読みした理由は、この本は本人が書いたものかどうかが話題になっていたから、それを確認するためにだけ立ち読みしたのだった。
結論はすぐに出た。
「女性アイドルの本をゴーストライターが『である体』で書くわけがない。これは本人が書いている。」
それから30年。
改めて読んでみると「山口百恵」という歌手がなんと繊細な女性なのか、か弱い恋する娘なのかと、三浦友和氏に嫉妬交じりの感情を抱いてしまう。特に、自分の忙しさゆえに恋人として十分に答えることが出来ないのだから、三浦氏にほかの女の影があっても気にしないようにしようと自分に言い聞かせたという記述など、そのけなげさに感動してしまった。これがあの「スーパースター 山口百恵」の恋する姿なのか、うぶな高校生と変わらないじゃないかと思ってしまった。
しかし、こういう普通の感覚を「スーパースター 山口百恵」になっても持ち続けていたことが、彼女をスーパースターにした所以なのだと思う。
何度も読み返した意味
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山口百恵さんが引退し、この本が出版されたときは私は小学生。
特別にファンというわけではありませんでしたが、彼女の引退と結婚が
社会的現象になっていたので、それに乗っかったミーハーな気持ちから
この本を手に取りました。
(あちこちの本屋で売り切れで、確か7軒目くらいでやっと手に入れられた)
買った後しばらく、何度も読み返しました。
当時は子どもで、何故何度も読み返したかの意味がわからなかったのですが、
今となっては子どもにとっても読みやすく、読み物として本当に面白かった
から、そしてこれを書いた山口百恵さんはあの若さでとんでもなく
「自己」を持った人だと心から感じています。
芸能界の裏側や親との確執などを書いていて、30年もたつのにいまだに
思い出せる内容も多いくらいです。
ですが、「私はこんな目に遭ってきたのよ、可哀想でしょ」という
同情をひくような雰囲気はなく、かといってただ事実だけを書き連ねた
冷たさもない、とにかくバランスのとれた書き方でした。
そしてそれはなかなかできないことだ、と。
そんなことを思ううちに、次第に「若いのにこんな本を書けるなんて。
もう少し子どものときを楽しめればよかったのに」とすら思ったり。
今でこそ「親だからといってすべて有難いわけではない」ということを
声にしても許されると思いますが(それでも表立ってはなかなか言えない)、
30年も前に、引退前だとはいえイメージが優先される芸能人が
父親に対するマイナスの感情をアクシデントを含めて正直に書いていたことは、
同様によくない親を持った私自身の気持ちの確立に大きな影響を
与えてくれたと思っています。
同じ女性としては、リハーサル時に「プレイバックPart2」を歌ったときに、
ノーメイクだったためにちゃんと歌えず、化粧というものの存在を思い知った
というエピソードが強く印象に残っています。
まだ化粧なんて知らない子どもだったのに。(お遊びはしてましたが)
敢て読まない手もある
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山口百恵のファンなら、敢て読まないのも手かもしれない。
森昌子、桜田淳子と3人娘とよばれた歌手時代。
タレント本として読んでも面白くないかもしれない。
引退後、マスメディアを遠ざけている理由もよく知らない。
山口百恵のファンでない人にお勧めしたい。
読んで、じゃ、歌も聴いてみようと思い、
歌のファンになってもらえるのなら嬉しい。
蒼い
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ほっとします。
歌声のような世界でした。
人を愛する凛とした美しい憧れの女性像がそこにありました。
「生きてみます、私なりに」
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あいにく私は彼女の現役時代のことなど知る由もない。彼女がこの本を上梓し、そして
引退したのが1980年、私が生まれたのがその翌年のことなのだから、それも当然か。
映像の断片で知る彼女はいつもどこかぎこちなかった。醒め過ぎて、落ち着き過ぎて、
そのくせやけに情緒的。居直り切っているような、すべてを隠しているような。鳥肌を
誘われるほどに美しくはあるが、決してかわいらしさはない。それこそ今の時代を生きていた
ならば、沢尻エリカどころではないバッシングを浴びるか(事実、国民的アイドルであった
当時でさえも、苛烈なスキャンダルに晒され続けてはいたようだし、そのこともまた、本書の
テーマの一つではあるのが)、限りなく誰の目にも留まらぬまま消えていくか、の二択しか
残されていなさそうな、そんな雰囲気、そして、そんなことをまるで気にしなさそうな、
そんな雰囲気。
彼女は世界を素通りし、世界は彼女を素通りしていく。
「孤独」、あるいは「孤高」ということばがこれほど似合う人もそういない。
いつからかはまるで心当たりはないのだけれども、気づいてみれば、私は彼女に魅せられて
いた。
そして、その雰囲気を寸分の誤差もなく表現してみせたのが、この『蒼い時』。その記述は
ときに冗長でけだるくもあり、しかし、絶えず底流を貫く例の「孤独」の感覚は紛れもなく
山口百恵の佇まいそのもの。
単純な文学的資質の面で言えば、綿矢りさや金原ひとみごときでは比較にならぬほど上。
というよりも、純粋な器の問題として、現代日本作家で肩を並べる人間が私には男女を問わず
思いつかない、それほどまでに傑出した素材、それほどまでに暗い葛藤を内に抱えた人間。
その過剰な資質のはかない「蒼さ」が惜しくもあり、すばらしくもあり……。
タレント本などというどうしようもないカテゴライズをはるかに凌駕して、評価され、
読み継がれるべき一冊。
20年以上前の本を探していただきました…
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20年以上前の本を探していただきました。
メールで状況を知らせてもらっていたので、安心して発送まで待つことができました。
ありがとうございました。
久しぶり読めてよかったです。
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久しぶり読めてよかったです。