先崎さんの生き方が破天荒で、またそれを取り巻く人々が魅力的で爽快なエピソードが満載されている本ですね。
筆者の先崎学さんは、将棋棋士8段で、20歳の頃にNHK杯で優勝するほど、才能に恵まれた方です。当方のような将棋ファンにとっては、「有名人」でもあります。
将棋を知らない方が読まれてもその面白さは満喫できると思います。とにかく、酒と麻雀と競輪と競馬というギャンブルに首までとっぷり浸かっている筆者の日常のすべてが、昔の「勝負師」を彷彿とさせてくれます。その交遊録といいますか、周りの人物像の描き方もとても味があり、観察力と表現力には卓越したものを感じます。
プロのエッセイストよりも、面白く巧みな文章を書く人はあまりいませんが、本業の活躍を考えますと驚異的ですね。その読者を飽きさせないサービス精神が文章から漂ってきますし、それでいて、きちっと締めるあたりは、「詰めの鋭さ」を感じさせます。
文庫化によって大きさも値段も手軽に。何となく手持ち無沙汰な時にお勧めの一冊。