蛸壺から抜け出す
★★★★★
本書では,専門分化された学問の現状が「学問の蛸壺化」と表現されており,
文学,教育学,独我論,精神医療,健康の不平等,EBM,実験研究,障害論
というトピックについて蛸壺からの脱出を目指した試みが提示されている。
こうした試みのなかで,構造構成主義の考え方が活用されており,
構造構成主義に関心のある人には,豊富な実践例となっている。
トピックは非常に多岐に渡っているので,
自分の関心のある論文だけを読んで問題意識を深めるのもいいし,
さらに別の論文を読んで,構造構成主義の使い方を学ぶこともできる。
個々の論文はいずれも堅実に書かれているので,
各学問領域の現状をしっかりと把握できる点も評価できる。
構造構成主義シンポジウムの様子とその体験記も掲載されており,
講演や対談の内容だけでも興味深いが,それを見た人の視点から
シンポジウム全体を追体験できるので,不思議な臨場感をともなって
楽しめるものとなっている。
いろいろ盛りだくさんな本。
わかりあうための思想をわかちあうための原理
★★★★★
現段階(3/20)では一般発売はまだしていないようですが、前もって入手しました。
第一部には、2007年3月11日に早稲田大学で開催された第一回構造構成主義シンポジウムの内容が収められています。養老孟司先生の講演、そして竹田青嗣・池田清彦・西條剛央三氏による鼎談を読めば、構造構成主義がポストモダニズム以降のパラダイム転換を主導する新機軸として駆動し始めていることが確信できます。
第二部には、個々の学問領域における構造構成主義の導入(=継承)を試みる原著論文や、専門外の人にもわかりやすく解説してくれる啓蒙論文、あるいは構造構成主義それ自体に疑義を差し挟む論文も掲載されています。
第三部の著書紹介には、これまでに刊行された構造構成主義関連の著書が挙げられています。関心のあるかたは、研究論文と著書とを問わず、できるだけ多くの文章に触れていただければ幸いです。