よくある歴史活劇の枠内に綺麗に収まったスタンダードな忍者小説。
かといって決してつまらないわけではなく、冷徹な忍びと温和な詩人の二つの顔を持つ
主人公・霧隠才蔵はじめとするキャラクターの魅力と、
平明で読みやすい文体の力で最後まで一気に読みこんでいける。
「水蜘蛛の術」などのおなじみの忍術にきちんと手法的な解説が述べられているのも良い。
白土三平的な少年向けエンタテインメント時代劇としても良質な作品。

ただ、子供に読ませるにはいささか性描写がきつすぎるのが難点。
多分読者サービスのつもりで組み込んだのだろうが、
結果として全体の硬派な雰囲気を壊しているし、しかもそんなにエロくない（苦笑）。
女をメロメロにする「淫指の術」なんて死ぬほど下らない技を真顔で説明されてもなあ･･･。