本書は、星野道夫について池澤夏樹が書いた文章、講演、対談などを集めたものだ。生前のものもあるが、ほとんどは彼の死以後に記されている。それは「動物だけでなくて背後の自然がぜんぶ写っている。時間をかければ見る人の側の成長に合わせて伸びていってくれる写真、時間をかけて何度も見ることで、ようやくいちばん大事なものが伝わってくる」写真と文章を解釈するとともに、ひとりの作家が友人の死をいかに受け止め、「悲しみから理解と肯定への道をたどったかを記す」物語でもある。
星野には写真集も著書もある。解釈はいらないというかもしれない。しかし、彼は何よりも古代からの神話が受け継がれるアラスカに生きた人だった。作品の深みはそこから生まれている。池澤の言葉は貴重である。星野道夫の真価を知るために。(齋藤聡海)