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正倉院薬物の世界 日本の薬の源流を探る (平凡社新書)

価格: ¥924
カテゴリ: 新書
ブランド: 平凡社
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私は面白かったけど ★★★★★
正倉院に納められた宝物の中には60種類の漢方薬が納められている。当時は中国からの輸入品で、たいそう貴重なものであった。
正倉院に宝物が納められるまでの歴史的な経緯、納められた漢方薬の由来や薬効、当時の薬物に関する思想、国内での生薬採取などを述べている。
私は生薬学を学んだので面白く読めたが、漢方薬に対する基礎的な知識がないと途中からは辛いかもしれない。
天平から江戸まで、薬ばなし漬けで、薬史の通になろう! ★★★★☆
  今風に言えば、自然民間薬、その歴史ばなしです。しかし古老に聞くほのぼのとした伝承薬の話ではありません。話題の中心は、8世紀半ば、亡くなった聖武天皇の49日法要に光明皇太后によって東大寺に献納され、今なお正倉院に現存している38種類もの薬物です。
  正倉院には、薬だけでなく、薬物の名前と量が記された「種々薬帳」も納められていました。その巻尾に5人の政治家が署名をしています。著者は、彼等のその後の運命を辿ることで、時代背景を丁寧に描いています。
  また、このリストに記載されている60種の薬が、中国の薬学の古典「神農本草経」に基づき詳細に検討されており、また著者独自の視点から分類されています。
  さらに正倉院に見られる官制の薬物状況だけではなく、当時の日本全体のそれが、「出雲風土記」などの文献に基づき、俯瞰されています。特に、発掘される木簡の中に見つかる、薬を扱った「薬物木簡」の解読成果を使って、奈良時代の薬物状況を明らかにしている点は、今後の解読への期待もあり、興味を惹かれました。
 最後に、これら輸入された正倉院薬物がその後どう国産化されていったか。江戸時代を中心に述べられています。今も各地に残る薬草園の由来が分かります。
 著者は薬学の専門家で、歴史の専門家ではありません。その為でしょうか、言及されている史実に関して、必ず根拠の文献が慎重に記されており、現代語訳テキストが紹介されています。歴史の専門家による啓蒙書よりも、一般読者には、自分で後追いが出来る楽しみがあります。
  この領域は、ある意味で博物学趣味が至る極みです。しかし一品文化史に興味のある方だけでなく、奈良時代の文化史に興味のある方にもお勧めです。大仏造立を中心とした奈良時代の歴史が、薬という珍しい切り口から書かれており、当時の外交や政治の状況が良く分かります。