マシュマロのような体とつぶらな瞳で読者を魅了するかわいらしいアザラシが現れたかと思うと、一方で、傷つき、寒さに凍えているシロクマや、へその緒から血を流している幼いアザラシに出会い、はっと息をのむ。この世の果てを思わせる静かな銀世界に、確かな生命の鼓動を感じる、そんな写真集である。
極寒の地の厳しい自然環境とはうらはらに、そこで育まれた動物たちの容貌は極めて優しく、美しい。残念ながら星野道夫はすでに他界しており、われわれには、これらの写真を通して彼が何を伝えたかったのか、正確に知ることはできないが、その写真がいまも多くのファンの心をとらえ続けていることだけは事実である。美しいオーロラとかわいらしい動物たちの姿をながめながら、生命の尊さについてゆっくりと考えを巡らせたい、そんな1冊である。(土井英司)