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環境考古学への招待―発掘からわかる食・トイレ・戦争 (岩波新書)

価格: ¥798
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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センス・オブ・ワンダー ★★★★★
広島県中世の港町、草戸千軒遺跡から完全なサケの椎骨が出土した。「ああ、サケも食べていたんだ」と分かるだけなら私でもできる。著者は推理する。「このサケは地元からは獲れない。椎骨の大きさからすると、東北か北海道の一メートルクラスのものだ。縄文時代の加工方法(燻製・乾燥・冷凍)で山陰から来たものだろうか。しかしその加工法では硬くなった身を食べるために、石皿などで骨ごと叩いて柔らかくしないといけない。椎骨は残らない。このサケは瀬戸内海ルートで塩蔵によって保存されやってきたものである。柔らかい切り身として食卓にのったのだ。」ひとつの骨から、当時の交易ルート、保存方法まで推理するのである。

骨の推理は魚だけではない。動物・人間さまざまなものが対象になる。骨の切り口から当時の魚の料理方法を。馬の骨の葬り方から、殉死があったのではないか。骨の傷跡から当時の人々の『死』に対する思いを推理していく。あるいはトイレからさまざまな情報を手に入れる。垣間見える当時の庶民の暮らし。推理小説のようにわくわくするような『発見』の喜び。私が考古学が好きなのはこう言う一瞬の喜びに出会えるからなのである。この本は珍しくそういう『センス・オブ・ワンダー』に溢れた学術書になっている。

環境考古学に迫る ★★★★☆
 近年たまに聞く「環境考古学」について筆者の個人的な経歴を通じて述べた本。
 筆者は伝統的な文学部で考古学を学んだが、そこで得た問題意識や経験から幅広い「環境考古学」を志向する。それは文系や理系という枠区を越えた、古生物学や人類学・地質学なども包摂した総合的な知の体系であるべきだ。
 動物やトイレなど、これまで十分取り上げられることのなかったテーマについて詳しく興味深く論じている。
解ることの喜び ★★★★★
遺跡から発掘された資料が、新しい謎を提供し、筆者は様々な分野の研究者、技師、職人等の意見を総合して、その謎を解く。この本はそういう形で話が進んでいきます。
各章毎に、謎が解ける時の、筆者の目からウロコが落ちる喜びが伝わってきます。
そして、目からウロコが落ちた時には、遺跡から発掘された魚の骨に残された包丁の痕から、この魚を料理した古代人がどちらの手に包丁を持ったかまでわかるというように、古代の日常生活が、不思議な程のリアリティーを持って目の前に広がります。
いろんなことに好奇心を持っている人にオススメです。