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幻の漂泊民・サンカ (文春文庫)

価格: ¥730
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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肝心の結論は単なる仮説だが ★★★☆☆
 「サンカ」の起源が江戸時代末期に飢饉を避けて山に入った人々であるという結論だが、そのことの積極的な証拠は何一つ挙げられていない。一方では、飢饉の際に農民が山に入ることによって生存が可能になったと書きながら、その一方でもともと山中に住んだ木地師が多く絶戸したと報告される。その場その場で都合の良い論理を使い分けているように思える。
 もともと著者は「竹の民俗誌」(1991岩波書店)において、熟練を要する技芸の一定の型の組合せ(川魚漁、竹細工等)を持つ漂泊民が広い地域に存在することから、かなり古い起源を考えていた。これは当然の想定であり、新説において、当初の想定の妥当性を反駁する材料が示されているとは言い難い。
 以上のように、学問的には不十分だが、さまざまな漂泊民の生活の息吹は十分に感じられて、ルポルタージュとしては面白かった。(最初からそういう本として読むべきものだろう。)
サンカ像を知る上で役に立った ★★★★☆
子供の頃近所にサンカ出身の夫婦がいた。
戦争のため両目を失明し片腕もなく二人で近所付き合いもせずひっそり暮らしていた。
戸籍を作って戦争へ駆り出されたと父が気の毒そうに話していたのを覚えている。
父から聞かされたサンカの話に子供のころからロマンを感じていたが
この本を読み、私が思い描いていたサンカ像とは少し違っていた。
父も恐らく三角寛の本の受け売りだったかもしれないが、
サンカが実存していたことは事実であり、
サンカの実態を知る上で私には有効だった。
謎に包まれた漂泊の民 ★★★★☆
かつて日本に存在した、山中をさまよいながら竹細工や川魚漁で生活していたサンカと呼ばれる人々について、文献や聞き取りによる丹念な調査により、実態や起源を論じている。

これまで、サンカに関する学術的な研究は少なく、民俗学の分野でも注目されなかったというだけに本書は注目に値する。

本書では、丹念な調査により、サンカとして生きることになった人々は、天明や天保の大飢饉で崩壊した村から逃げ、山中で生計を立てざるを得なかったことが原因であると論じている。

これまで、権力体制の外に生きる謎の民とか、大和政権以前の原始日本民族の末裔とか、ロマンチックな説も唱えられたそうだが、現実的というか、ある意味「夢のない」結論に至ったようだ。

また、三角寛(みすみ・かん)という異様な作家について大きく取り上げている。サンカを題材に昭和戦前期に多数の作品を発表した作家で、作品はベストセラーになったそうだが、誇張と歪曲に満ちたサンカ像を描いたため誤解と偏見を生んだと、筆者は厳しく批判している。こんな作家がいたなんて知らなかった。

誰もが知る戦国武将や幕末の英雄など歴史の光の当たる部分だけでなく、サンカのような歴史の底辺、周縁部に生きた人々についても研究が進むことを期待したい。
サンカの存在 ★★★★★
柳田邦男がサンカを日本先住民族の末裔と考えたことから、サンカが日本先住民族との説が広がっていますから
サンカが近代に成立したとの説は確かに意外でしたが。
本書に書かれているようにサンカに独特の文化が無いので近代に成立したとの説は納得がいく部分もあります

例えば欧州先住民族と言われるラップ人ですが、彼らには彼らの独自の文化や言語・信仰があります。
他にもユダヤ人とかアメリカ先住民族とか、圧倒的多数の異民族の中で混じって存続している少数民族は、世界中に珍しくも無い
しかしそうした少数民族が、民族としてコミュニティを維持している以上は、独自の文化や言語を残しているものです。
しかしサンカにはそういうものがまったくない。

たかだか数百年程度しか歴史もたない、東北の狩猟民マタギも、アイヌ語にルーツをもつ独自の言語をもっているが、サンカにはそれすらない
多数派民族の影響を受けて文化が変化する事はあっても、自己のアイデンティティを確立する以上は、民族は固有の文化を守り続けねばならず。
それが出来ないのならば多数派の民族に吸収され消滅する事になっています。
この事実を考えれば近代成立説は納得が出来る面があります。
そうでないとすれば、どうしてそれを失った民族が、多数派に吸収される事も無くコミュニティを維持できたか説明する必要があるでしょう。

現在、サンカと呼ばれた人たちは、被差別部落の一部として定住生活を送っていますが。
私は被差別部落に対して、差別意識などはもっていませんが、その上で考えることは。
被差部落が長年に渡り差別の対象となったのは、鎌倉・室町時代に日本の村社会が形成された時期に、それにあぶれた一部の人々が、そのルーツとなっているからだと考えられています。
サンカと呼ばれた人たちも、そうした被差別部落と同じような歴史を辿った人たちだったかも知れません。

しかし被差別部落について議論する事もタブー視される歴史が長かったから、案外、サンカなどの人たちについての記録が少ないですね。
研究は行われていると思いますが、こうしたことはもっと公然と議論を行い、サンカのルーツなども調査は行われるべきだと思います
小説などで、サンカが非常に美化された側面もありますから、サンカの存在が少々、脚色されて広まっているような印象も受けます
それが良いか悪いかはともかく、日本の歴史を考える上で、サンカのような人々の存在も考える必要があるでしょう
本当に日本先住民族であるなら、彼らがどうして民族として独自の言語も文化も守っていないのにコミュニティを維持できたかも知りたいと思います
大いに勉強にはなるが・・・・・・ ★★★☆☆
 沖浦氏の「サンカ近世末発生説」については、 礫川全次さんが批判されている通り。記録がないからといって、それ以前はなかったと断定できるだろうか。どうも大学の先生の研究は、実証的に過ぎ、意外と歴史の真実から離れている場合がある。勉強しすぎて、歴史を見る視野が狭くなってしまうのではないか。