旅のお供に笑いと涙を。
★★★★★
JAL機内誌「SKYWORD」の連載をまとめたエッセイ集。
実際にJALの機内で連載を読み、後日購入しました。
仕事に追われながら世界各地を旅してまわる、
著者のコミカルな一面にも触れることができ、親しみが湧いてくる一冊。
世界一美しいところ。として著者があげるヴェネツィアのダニエリ。
日本人は美の条件として死を要求すると述べ、
年に数センチずつ、確実に沈みゆくヴェネツィアを
「壮大にして緩慢な死は日本人の美意識に合致する」と表現するところ。
また、作家として大成するにつれ両親が名づけた本名が消え行く様を
「仕方がない。私は小説と結婚したのだから」
と表現された箇所は読んでいて思わずうなってしまった。
「黄門伝説」とのタイトルの一編では思い切り下ネタに振り切り、
著者自ら104に水戸市内に肛門科がないかと調べたとの記載には大笑い。
最後の一編「星を狩る少年」での心美しい青年との出会いのエピソードは泣けた。
気楽に読める割に笑いも涙も味わえて得した気分になれます。
文字通り旅のお供にぜひどうぞ。
ハズレは無い
★★★★☆
飛行機の旅とは無縁の私ではあるが、浅田氏のエッセイは楽しめた。浅田氏の本にハズレは無い。
40編すべてなかなか良い話だが、中でも印象に残ったのは「ありがとう」に出てくる日本の青年である。ロサンジェルス空港で欠航便が出た時に、日本の青年が何もせず、ただ、廻りが(あるいは航空会社が)なんとかしてくれるのを待っている。日本ならこんな時、航空会社が親切に対応してくれるのかも知れない。しかし、ここはアメリカ、「自己責任」の国である。自分で次善の策を考え、チケットを取り変える方法を考えなければならない。結局、浅田氏の同行者が八方手を尽くしてチケットをとってやるのだが、そのあいだもその若者は人ごとのようにボーっとしている。極端な例ではあるが、これが甘ったれた現代日本人の姿だ。最近の日本の姿は情けないこと甚だしい。誰もが国や行政や企業に対して「アレをして欲しい。コレをして欲しい」と声高に叫ぶ。それをしてくれなければひどいことのように非難する。民主党政権になってその傾向にさらに拍車がかかっている。日本は「おねだりの国」になり果ててしまった。もうこの国には「自己責任」という言葉はない。嘆かわしいことだ。
ファンとしては買うべきなのだが……
★★★★☆
大望のエッセイではあるが、
既に大作家としての地位を確立されたためか、
いささか馬鹿馬鹿しい笑いには欠けていて、
勇気凛々シリーズを期待して読むと、肩すかしを食らった気になる。
とはいえ、軽々しいストーリーの羅列ではなく、
原稿に追われながらも世界を飛び回り、各地での濃い体験や深い思いが書かれている、
ほどほどに愉しめるエッセイでもある。
それに浅田次郎の作家業としての苦労もうかがい知ることが出来、
ファンとしては読んでおいて損はないだろう。
ただ再度書くが、
この人がまださほど「面も割れず」、赤川次郎と間違えられていた頃の低頭な気持ちよりも、
大作家として名をはせた現在とのギャップが行間に感じられ、
アイドルとして親しみを感じていた人が、あっという間にスターへと上り詰めてしまったような、
そんなファンの心理を味わうかも知れない。
それは勿論、歓びでもあり哀しみでもあるのだが。
旅をしたくなる話題が豊富
★★★★★
JAL機内誌の連載を文庫化したものだけに旅や旅先の食べ物の話が多く、海外や国内のお薦めスポットが随所に盛り込まれている。
加えて、本書の面白い点は全く旅行に関係のないテーマも少なくない点である(勇気凛々シリーズのような話)。
浅田氏のエッセイは思わず声を出して笑ってしまう内容が多い中で、相応に雑学力が向上する。
それは著者の興味がかなり広範囲に亘っているほか、これまでの職業経験(人生経験)も多彩であるためであろう。
ワンコインでここまで楽しめるエッセイは少なく強くお薦めできる。
一期一会
★★★★★
浅田さんは読んでいてはずれのない作家である。
小説ではわくわくドキドキ、しんみりと
そしてエッセイでは抱腹絶倒そしてこころにポッと明かりをともしてくれる。
そして時代小説から人情物、任侠ものまでさまざまなジャンルで一体頭の中がどうなっているのか、そう思っていた。
浅田さんの小説家としての顔のほか人間性が沢山うかがえる作品である。
最も人気のある作家であり多忙の浅田さんのもう一つの顔がトラベラー「旅人」である。
いまだに仲良しの同級生とのわいわい旅行から、一人旅で出会った人たちのこと、感じたこと
そういったさまざまなエピソードを浅田さんの読むものをぐっとひきつけるユーモアあふれる絶妙な
文章力でつづられている。
読みながら何度声を出して笑ってしまったか・・・
中国での関羽に似た役人とのエピソード(ユーモアがいかに大切かかんじさせらる)
余裕を持った旅行計画の薦め、キャビアの話、モロッコで出会った無敵の無邪君の話など
どの話も面白く読み終わるのが勿体無かった。
読んでから「どこかに行きたい」ずっとそう思っている。