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植草甚一コラージュ日記〈1〉東京1976

価格: ¥1,365
カテゴリ: 単行本
ブランド: 平凡社
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   評論家・植草甚一が全集の月報用に書き下ろした日記を単行本化したものである。併せて、作者と親しかった人たちによるコラムやインタヴューも収録している。日記は1976年1月1日から7月31日までの7か月分を「東京編」として再録し、作者がニューヨークへと旅立つところで終わっている。著者の植草は「J・J氏」の愛称で親しまれ、60年~70年代にかけて映画やジャズ、ミステリー小説の評論に健筆をふるった。その洗練された生活スタイルは、当時多くの若者の共感を呼んで支持された。1979年に没したので、この日記は晩年のものである。

   ページを開けば即座に分かるが、全編ペンによる植草の手書き文字と、銅版画とイラストによるコラージュがこの日記を大きく特徴づけている。使うペンはその日の気分によって変えていたようで(ときに1日の記述のなかでも)、数種類のペンのいろんな表情の文字を見ることができる。日記の行間には、作者が選んだイラストなどがあちこちに散らばって、さらに見た目を楽しませてくれている。印象的なのはバスに揺れながら線描した「ブルブル絵」だろう。その瞬間著者が生きていたという生々しさが、時間を超えて直截的に伝わってくる。

   J・J氏の1日は、日記を読む限り、読書と散歩と執筆に尽きる。ほぼ毎日東京のどこかを歩き、本を探し求めている日常が細やかに記されている。そこには、文化の旗手だとか若者のカリスマだとかといった大仰な評価などどこ吹く風といったような、飄々としたひとりの老人の生活があるだけである。(文月 達)