ジプシー・キングスはパコ・デ・ルシアほど評論家ウケすることはないだろうが、ルンバフラメンカというジャンルを非スペイン語圏に普及させた功績は大きい。この八重奏、今作『Roots』では伝統的スタイルに回帰しながらも、しっかり自分たちの色を出している。プロデューサー、クレイグ・ストリートの思いつきなのだろうが、古びた農家でお得意のほろ苦い曲を弾いてみましたという趣きだ。エレクトリック・サウンドはもちろん、騒がしいドラムも一切なし。アコースティックギターの速弾きバッキングが小気味良い。特にインスト曲でのトニーノ・バリアルドのリード・ギターは天にも昇る気分。

   リード・ヴォーカルはニコラス、カヌート、パチャイが交互にとっているが、それぞれの声質やニュアンスを生かしつつ、ギターやハンド・パーカッション、ベースと絶妙なバランスを保っているのは、ストリートの手腕ならでは。ポップな曲や大げさなロックビートはなし。純然たる本物志向の1枚だ。（Tad Hendrickson, Amazon.com）