それ以前のスタンダーズ・トリオと決定的に違っているのは選曲だ。もちろん本作もスタンダード集には違いないが、これまでのようにいわゆる映画やミュージカルが原点ではない。バド・パウエルの<1>に始まって、ベニー・ゴルソンの<2>、ディジー・ガレスピーの<3>、あるいはクリフォード・ブラウンの<7>など、ビバップからハード・バップ時代にジャズメンによって書かれたスタンダードを大々的に取りあげている。
結果、演奏はこれまで以上にエキサイティングでジャジーになっており、まさに熱演の連続。4ビート・ジャズの楽しさを満喫できる最高のトリオ演奏だ。スタンダーズ・トリオのアルバムに駄作なしといわれるが、なかでもこれはとびきりの作品である。(市川正二)