アルバムの最初に入っている「バンブル・ビー」は、おなじみ「熊蜂の飛行」(リムスキー=コルサコフ)のことだ。ただしこのくまんばち、一匹ではなく恐ろしいほどの大群で襲ってくる。ピアノの音ばかりでなく、ノイズに近いものも含めたさまざまな電子音がうなりをあげて飛び回る。ジェットコースターのように激しく上下するメロディーを追っていくうちに平衡感覚が狂ってきそうな演奏だ。
1曲だいたい3~4分の小品を集めているが、「パガニーニのラプソディ」(ラフマニノフ作曲「パガニーニの主題による狂詩曲」)だけは10分を超える比較的長い曲になっている。編曲者のジェフ・ウエインも、ここが腕の見せどころとばかりコミカルな音づくりからロマンチックな旋律美まで出血大サービスの頑張りようだ。
マキシムのピアノを一番じっくり聴けるのは、基本的にソロ演奏である「ダンス・オブ・ザ・バロネス」。全体的に濃いめの曲が多い中、アコースティック楽器とのアンサンブルできかせるラテン・ナンバー「クバーナ・クバーナ」がさわやか。(松本泰樹)