大家族の風習があるコソボで、ひとつの家族、またその中の兄妹に焦点を絞っている本書を見ていると、殺伐とした心を持ついまの日本人が、叱咤激励を受けているような錯覚にさえ陥る。それは著者のモノを捕らえる目の確かさと、子どもたちに対しての誠実さや優しさの表れとも言えるだろう。
本書はカラーとモノクロで構成されており、ビジュアル的にも完成度が高い。特にモノクロの写真は暖色系のセピアに近い色調で優しく美しい。見終わってもその力強い映像は、心に余韻を残す一級品だ。しかしコソボの置かれている歴史的悲惨な状況、たとえば日常の苦しみを捕らえた写真はあまり取り上げられていない。あくまでもコソボの中でポジティブに生きる人々に焦点を合わせた1冊。(今西乃子)