永久保存版とも言える貴重な内容 !
★★★★★
本雑誌を購入したのは初めて。勿論、水木先生の特集号だからである。マンガ評論家でもある呉智英氏が選んだ貸本マンガ時代を含む「10の傑作」、梅原猛氏との「怨霊vs妖怪」対談、43歳での少年誌デビュー時の資料、水木しげる以前の「武良茂」時代の貴重な画と呉智英氏の解説、水木プロ訪問記、境港市の紹介で構成される。
「10の傑作」では、「墓場の鬼太郎」、「悪魔くん」、「河童の三平」が少年誌登場前のオドロオドロしい姿そのままに紹介されるので、私の様な年配の者にとっては非常に懐かしい。また、「テレビくん」やその他の作品を見ても、水木先生の描画が昔から非常に微細であった事が窺える。「描き込まずにはいられない」との信条の由。歴史上の人物を作品に取り込むのも上手い(「悪魔くん」の元ネタはゲーテ「ファウスト」)。「怨霊vs妖怪」対談は、お二人の年齢が近く、戦争体験を共有している事もあり、和気あいあいとした雰囲気。水木先生が運動が得意だったとの珍しい話や、日本海側から見た日本等が語られる。
しかし本誌で何と言っても貴重なのは、「武良茂」時代の画(カラー)であろう。微細なタッチこそ変わらないものの、自画像(復員後)を見ると、不安が滲み出ている戦後の一青年の姿がそこにはある。父上や母上を描いた画も貴重だし、実家の六畳間を描いていながら抽象画に見える画も当時の心境を窺わせる。また、この中にはヌードデッサンや「電車の中で見たる女百態」等もあって、やはり水木先生にも修行時代があったんだなぁ、との当たり前の事を実感させてくれる。「南の島の記憶」中の画も、素朴と繊細が巧みに入り交じり、水木マンガの原点を思わせる。命の恩人の(元)少年とのツーショットも感動的。
知らなかった水木先生の一面も垣間見られた。永久保存版とも言える貴重な内容。