学術上のスタンスがわかりづらい。論調が古い。
★★☆☆☆
公営ギャンブル(競馬、競輪、競艇、オートレース)を取りあげ、
その各々について歴史、運営機構とその仕組みを解説している。文
化経済学がなんたるかに関する議論は少なく、あくまで公営ギャン
ブルの解説本ととらえられる。公営ギャンブルが今後発展していく
ためには、幅広い層からの指示が不可欠であり、そのためには競技
場が空間として洗練されねばならないという視点に著者はたってい
る。中心となる参考・引用文献は、同じ文化経済学の入門書、カイ
ヨワの『遊びと人間』、各種公営ギャンブルの運営機構における資
料などである。
様々な資料にあたり、1999年当時の公営ギャンブルの概要を描き出
しているが、文化産業の定義や文化経済学のスタンスの説明がない。
公営ギャンブルを調査・研究する際の基本的な資料集めのためには
いいかもしれないが(参考文献として挙げられているものをあたって
いく)、「文化経済学」独自のスタンスのわかりづらさから、それ
以上の意義はないものとなっているので注意。
論調は、「公営ギャンブルはこんなに浪漫や遊び心溢れるもので、
しかも近年では文化として洗練されつつある」みたいな調子だ。
文化のヒエラルキー(高貴な文化と低俗な文化)を信じて疑わない
様子は、1999年出版の本とは思えないほど論調が古い。著者の年齢
ゆえか(出版当時63歳)。