ステイシー・ケントの声には、かの偉大なダイナ・ワシントンのように即座に聴衆の耳を捉える資質と切れ味の鋭さがある。ケントの中音域の打ち寄せるような質感はその切れ味をさらに推し進め、さらに高まったり興奮して打ち震えたりする。ケントと、その率いる今回のデビュー以前は無名に等しかったイギリスのバンドは、(I Didn't Know About Youにおいてデューク・エリントンとボブ・ラッセルが見せたような)切り詰めたバラードによるアプローチやジョージ・ガーシュウィンのThey All Laughedでの轟くようなスウィングで一躍脚光を浴びることは間違いない。ピアニストのデヴィッド・ニュートンは軽いタッチでメロディに乗って滑走するかと思えば、一転してファンキーなハーモニー満載の火花の散るようなソロに移る。ケントの魅惑的な声とニュートンの一風変わったピアノテクが混ざったThe Tender Trapを聴くがいい。創造力あふれるこのバンドは長いインストゥルメンタルの楽節に達しても落ち着いたもので、ケントがエラ・フィッツジェラルドに賛意を示した歌詞に余裕でキューを出せるようにしてくれる。そしてユニークで聴衆を魅了するスタイルのすべてが彼女独自のものだ。 --Andrew Bartlett