「That's Love」と「Is It Raining at Your House」は、まどろっこしいメタファーや月並みなスローガンを排したロマンティックなチューン。ちょっとした教訓劇といえそうな「The Cigar Song」があるかと思えば、終幕に新鮮味のないゴスペル「Farther Along」がお義理で登場したりもする。ゲストの参加――ペイズリーと同世代のアリソン・クラウスとヴィンス・ギル、ヴェテランのビル・アンダーソン、ジョージ・ジョーンズ、リトル・ジミー・ディケンズ――はうれしいが、それほど必要性のあることではなかった。ペイズリーの見事な音楽センスがたっぷりと収められているのだから。また、ペイズリーは長い間忘れられていた伝統を復活させている――サイドマンをつけたのだ。かつてチェット・アトキンスは、バック・オウエンズの背後で演奏していたカーター・シスターズやドン・リッチのためにプレイしたが、ペイズリーもそれにならい、右腕となった驚異的なギタリスト、マール・ハガートと先輩のレッド・ヴォルカートにスポットライトを当てた。ヴォルカートは「Spaghetti Western Swing」でリラックスした早弾きを披露するほか、中間部でカントリー・ジャズ調の長いジャムが繰り広げられる「Make a Mistake with Me」では自由に羽を広げている。
ウィットとハートと土臭さへの頑固なまでのこだわり。2001年の傑作アルバム『Part II』に続いて、ペイズリーはいっそう聴く者の胸にせまるアルバムを送りこんできた。本作は新たなスタンダードになるはずだ。(Rich Kienzle, Amazon.com)