野崎良太は音楽的な視野がものすごく広く、あらゆる要素をそのサウンドの中にブチ込む。たとえば「Nana」にはクイーカやビリンバウといったブラジルの楽器が登場し、サックス・ソロが加わると渡辺貞夫のような世界になる。かと思えば葉加瀬太郎への提供曲「Arabesque」は同じブラジリアン・テイストでも、そこにスパニッシュのスパイスを加える、といった具合で、とにかく目まぐるしく、さまざまな要素が交錯する万華鏡のような世界を聴かせる。プログラミングだけに頼らず、最後はしっとりとしたアコースティック・ピアノ・ソロで終わるというエンディングもしゃれている。(市川正二)