ライアン・カイザーの前作、2002年録音の『ザ・サイドワインダー』はオルガンのサム・ヤヘル、ギターのピーター・バーンスタイン、それにドラマーという意表をついたトリオをバックにしたユニークなワンホーン作だったが、それに続く本作はドラマーがグレッグ・ハッチンソンに代わっただけで、編成自体は前作と同じ。ピアノレス&ベースレスのため、たとえホレス・シルヴァーやナット・アダレイ、ケニー・ドーハムのヒット曲を演奏しても、単なるハードバップ~ファンキー・ジャズの焼き直しではなく、新感覚の演奏になっているところが最高に新鮮だ。
果敢なソロと極上のグルーヴ感、それでもってオリジナル2曲を含む選曲が秀逸とあって、ジャズの醍醐味と興奮がストレートに伝わってくる演奏。バーンスタインのギターもいいし、ハッチンソンの参加も大正解だ。チャーリー・パーカー作のタイトル曲はカイザーとハッチンソンによる異色のデュオだが、このデュオはけだし聴きもの。(市川正二)