研究者として、人として、大事な姿勢と実践スキル
★★★★★
調査研究を初めて行う実践者、研究の初学者にぴったりの本です。
研究方法の概論や、統計・医療統計の知識に関するもの、SPSSの操作方法の書籍は多くありますが、
この書籍は、今までは各研究室に入ったりスーパーバイザーを迎えたりして
「経験で覚えていく」「背中を見て覚えていく」であったであろう多くのことが丁寧に書いてあります。
調査票の作り方や、入力作業のときに助けになる“知っていると知らないでは大違い”な小さなテクニックも
多く書いてありますが
この書籍の特筆すべきことは、研究にとりかかる以前の、研究者の姿勢として大切なことが書いてあります。
◆課題意識を深めること…
仮説や統計分析方法を決めてから調査を始めるように、ということは多くの書籍にも書いてありますが
この書籍には、それ以前の「自分の課題意識を焦点化すること」の大切さと具体的な方法が書いてあります。
研究計画書を作成するにあたって、研究者に共通して大切なことが書いてあり、初学者には心強いガイドとなります。
計画書を作成し、研究作業を進めるプロセスでも、同様に頼もしいガイドとなるでしょう
(これを書いている私が、ただいま初めての自分の研究に着手した段階なので「でしょう」という表記になりますが
その前に経験した別の研究補助の経験から、この書籍がガイドとなることを確信しています)
◆研究に取り組む誠意
そして、それ以前に大切なこと、「研究は誰かの協力があって初めて成り立つ」ということを強く意識し
協力者に対する誠意、そして頂いたデータと向き合う時の姿勢について、書籍全体にその大切さが書いてあります。
著者自身の研究に向き合う姿勢と誠意が文字の間にあふれています。
そして、研究者としての誠意とは、研究者以前に、人としての誠実さそのものかもしれない、と感じます。
ヒューマンケアに関する研究であれば、ますます研究に対する誠意とは人に対する誠意、研究領域全体に対する誠意でもあるのでしょう。
書籍の合間にあるコラムは、すでにいくつかの研究を重ねた先輩からの、初学者に向けたメッセージです。
大切に読み込み、研究のときに常に手元に置いておきたい一冊です。