バンビ スペシャル・エディション [DVD]
価格: ¥3,465
これまで観た映画でいちばん衝撃的だった場面はどれかと考えると、誰もが必ず思いつくのは「バンビのお母さんの死」のシーンであり、いやというほど多くの作品を観ている映画ファンでも思い出すだけで身震いしてしまう。この最初の別離の場面(画面には出てこない出来事だが実にショッキングである)が、ウォルト・ディズニー制作の名作アニメ『バンビ』(1942年)の目玉だが、本作品の名場面はこれだけではない。テンポよく、かつ、おっとりしたタッチの69分の作品は、幼いシカの1年を追っている。しかしもっと広い見方をすれば、誕生してからおとなになるまで、気ままな子ども時代から責任あるおとなになるまでというライフサイクルそのものを描いており、このテーマが全編こましゃくれてきびきびしたスタイルで表現されている。
本作品は観客に説教するわけではないので、ためになる話を聞かされてうんざりさせられることもない。アニメは実にすばらしく、緑ゆたかな森の自然はたえず(鮮烈な山火事の場面であれ、「人間が森にいたの」とバンビのお母さんが語る暗い場面であれ)奇跡を見せる。小ジカ以外の動物を描くほうが簡単だったろうが、ディズニーのアニメーターはあえて難題に挑戦し、凍った湖の上をおぼつかない足取りでわたるバンビの姿、くの字に曲がっているバンビのきゃしゃな脚を描いた。うきうきとしてかわいらしく描かれているシーンである。バンビがちょっと元気のないときも(バンビに限らずどのシカも落ちこむことはあるのだが)、親友であるウサギのとんすけ、スカンクのフラワーがバンビのぶんまで元気にふるまう。初期のディズニー映画の大半は、詩的な瞬間と普遍的な真理にあふれているが、『バンビ』は実に気取りがなく、純粋で、とても分かりやすい。とんすけのセリフではないが、陽気な「浮かれ頭」になる楽しい作品といえよう。(Robert Horton, Amazon.com)