読みかえればどんな時にも支えになる。
★★★★★
精神疾患の方たちに関わる看護者たちへの講義録です。けれど、すべての「言葉」がどんな職業の人にも、どんな人間関係にも、「ああ、そうだよね」と相槌を打たせ、心に響いてくるのです。
自分が援助者としてどうやって仕事をしてきたか、人と接してきたか、あらためて立ち止まって考えることを教えてくれました。
中井先生の著書のもつ、心地よい言葉のリズムはやはり詩を能くする方だからでしょうか。私には「詩」でさえあります。
これからも何度も手に取る本だと思います。
「ひらがな」の本
★★★★★
「中井久夫先生のことをよく知らない若い精神科医・精神科スタッフには、古典的名著『精神科治療の覚書』や『中井久夫著作集』シリーズなどよりも、この本を薦めるといいのかもしれないな」と思いながら読んでいました。
中井先生が実践されてきた精神科医療は、こむつかしい漢語だらけのものでもなければ、気取ったカタカナまじりのものでもなく、本当に臨床の地に足をつけた「ひらがな」で記述されるようなものだということが実感できる本です。
中井久夫の講義録
★★★☆☆
シリーズ ケアをひらく の一冊。ある病院のスタッフを前に著者が行なった講義が元になっている。
看護雑誌に掲載され、さらに追加、構成見直しをおこない単行本化された。語り口は平易で読みやすい。
著者の経験をまじえた話は聞いていてとても興味深い。参考になる。精神科医療の現場の実態が垣間見れました。
章立ては
1.こんなとき私はどう言うか
2.治療的「暴力」抑制論
3.病棟運営についていくつかのヒント
4.「病気の山」を下りる
5.回復とは、治療とは......
となっている。
付章の精神保健いろは歌留多も面白い。
さらに巻末には索引がついている。
臨床に戻りたくなります
★★★★★
病院の厳しい毎日に負けて、臨床を離れた医療者です。
しかしこの本を読んで、もう一度気負わずに、現場に戻りたいと感じました。
精神医療に限らず、医療の現場にいるたくさんの皆さんにお勧めします。
付章2の精神保健いろは歌留多も秀逸です。
温かい本
★★★★★
中井先生のいう、「プロ的エレガンス」が底流に穏やかに流れる本です。ああ、こういうのをプロって言うんだー!と感じました。
内容としても、さらりと書かれてあるし、ほんとうに自然な感じだけれど、物事の見方が変わるというか、新鮮味を持ってまた向かうことができそうな、そんな気がします。
テーマとして、興味深かったのは、どんなことを患者さんは知りたいのか、どのようなときに言語化なされるのか、幻聴の考え方、病気と治療の政治学・・・。
そして、回復初期には忘れられてはならないということ、患者さんが安心して治れるかを考えていくことなど、である。治って(あるいは保護室を出て)大丈夫か?と問うことが、実は予後をよくするのだということを知って、逆説的だけれど、患者さんのそれから先のことを考えるととても大切なことなんだなあと思いました。
【患者さんがどのように体験しているのかを考える】とともに、【どのような対応(’の磨き方’も、かな?)をすればいいのか】についても、具体的なレベルで書かれてあります。
人間と人間の出会いという温かさを感じました。