『TIME TO GO』までのリップは、ヤングでソウルで、気が利いてて、かなりあからさまなポジティビティもまったく照れるどころか、思惑通りアップリフトされていた訳で…。しかしそんな彼らも20代後半に差しかかり、そして時代は、危機感を感じてて当たり前の昨今である。そこでリップが何にフォーカスしたかというと、分かりやすく聴こえる大部分に生音をもってきた。
アコギ、エレキ、生ドラム風のオーガニックなスネア。大人っぽくメロウな印象の楽曲たち。「Dandelion」に象徴的な、今最も大切なものは何か? の表現の率直さはクリアな新機軸だ。けれでもリップは、言葉による「泣き」は頑ななまでに注入しない。音や質感が琴線を震わすことはあっても、だ。そうした彼らの潔癖さを愛する人は本作を長く聴けるはず。(石角友香)