しかし、著者がその食の探求のために訪れた土地を知っている方々や、その「味」を記憶している方々には、著者の狂騒ぶりに納得されるのではないでしょうか。
どれほど、有名で格式高く、または現地の味そっくりと評判のお店でも、日本の味には限界があるからです。そりゃ、空気も水も違うのですから。
まだその「味」に出会ったことがない場合でも、十分に想像力を刺激してくれます。冒険心をあおるという感じでしょうか。
著者がその「味」を再現、研究するために、NYの自宅で繰り広げる饗宴も言っては悪いけど、「狂人沙汰」です。
あちこちの専門家を質問攻めにすることから始まって、類似品を十数種類購入して試食したり、調理器具を数種類取り寄せて実際に味に変化があるか比べてみたり、読んでいて、この人の財布はどうなっているのか不思議になります。実際にその手で実行した結果だからこそ、説得力があるのでしょうが。
そんなジェフリーさんも、日本料理にけだし惹かれている件を読むと、日本人で良かったなあとしみじみ。日本料理の繊細な味がわかる舌を持つ民族の一員であることを誇りに思ったりします。
味覚の言語化という側面も注目に値します。
なにしろ 33 種類ものケチャップの味比べや、水の味の比較なんてものもあるのですから。
第 4 章の和牛、そして京料理への賛歌は読んでいて気恥ずかしくもありましたが食欲を刺激してくれることうけあい。
おおげさな表現が定型化しているのはアメリカ人だから? それとも作風?
空腹時に読むのは避けておきたい一冊です。
連載時によみたかったなぁ