リラックスした雰囲気で行われ、親密な空気を作り出したライヴ。エリック・クラプトンの奏でるブルージーなサウンドをフィーチャーした実に楽しめる一品である。照明やセットも控えめに、ごく限られたバックアップメンバーが見守る中クラプトンがアコースティック・ギターに手を伸ばす。そして、観客を別世界へと導くのだ。観客と交わす言葉は少ない。その代わり、音楽が雄弁に物語る。
   収録曲は「ビフォー・ユー・アキューズ・ミー」、「ティアーズ・イン・ヘヴン」、「ウォーキン・ブルース」、「アルバータ」、「サンフランシスコ・ベイ・ブルース」（この曲では、より自由な演奏を楽しめる）など。かつてクラプトンがかかわったバンド、ヤードバーズ、クリーム、ブラインド・フェイスを思わせるリフも奏でられる。そして、大ヒットした名曲「いとしのレイラ」（前妻パティ・ボイド・ハリスンに捧げた曲）に、スタンダード・ナンバーながら常に大きな歓声が上がる「オールド・ラブ」。シンプルなセットに、がらんとした印象のステージから紡ぎ出される音。「ローリン・アンド・タンブリン」が始まったときに観客からわき起こるエネルギーは、吸収しきれないほど大きい。この興奮こそがクラプトンの真骨頂だ。確かな技術に支えられたソウルフルな心からの叫び。年齢を重ね渋みを増したイギリス人ロッカーが奏でる白人によるブルース。これは真のクラプトンファンなら見逃せない作品だ。（Paula Nechark, Amazon.com）