やっぱり難しい。
★★★☆☆
決して難しく書かれた作品ではありません。筆者の狙いは、この作品をあくまでも”プロットに沿って解読する”ことにあります。このような試みは、決して典型的なドストエフスキーへのアプローチではありません。どちらかというと、ロシア論、大審問官論、政治社会思想論、宗教論などの”何らかの角度からそれを解析する方”が普通だし、わかりやすいはずです。しかしながら、”この作品の有する驚くべき豊かさ”に促がされて、著者は、この作品を”その展開に沿って論ずるという”方法をとっています。著者の類まれな西欧文学に対する学識が、このような方法論を可能ならしめたはずです。しかしながら、出来上がりは、なかなか、素人の手に終えない出来上がりになっているようです。というより読み手のほうにも、著者に劣らないだけの西欧古典文学への知識が必要とされるようです。そうでなければ、”作品の複雑極まりない関係性”への接近は無理なようです。正直なところ、何年か後に、もう一度、取り組んで見なければいけない作品のようです。