1962年にこの画期的な本の初版が出版されたとき、エベレット・ロジャースの名は「技術革新の普及の研究と事実上同義語」とされた。『Diffusion of Innovations』の第2、第3版は技術革新、普及の研究のうえでの標準テキストや参考書となる。そして今、この第4版でロジャースは30年以上にも及ぶ研究の集大成を披露する。この分野における分析と研究手法に新しいスタンダードを打ち立てることになるであろう。

   本第4版は、理論的枠組みとこの普及モデルを実証する研究根拠の見直し、新しい概念と理論的視点が取り入れられた新たな知的冒険である。革新の普及に関する5000にのぼる文献のレビューと統合において、より批判的な立場を取っているという点で、今版は旧版とは異なる。過去30年あまりの間に革新の普及の研究は拡大し、広く認知、応用、評価されるまでにいたったが、同時に建設的、全面否定的批判の両方を受けてきた。この批判は、普及を研究する多くの学者たちが型通りで、また限られた方法で自分たちの研究領域と手法を定めていることによるところが大きい。ロジャースはたとえば、多くのケースで収束モデル（相互理解にいたるために参加者が情報を作り共有する）が線形モデルより正確に普及のプロセスを説明することを示し、これまでの普及の研究の制約を分析している。

   ロジャースはバリ島の「緑の革命」から任天堂のテレビゲームまで、全く新しい事例集を提供しており、これらは彼の広範な研究を見事に解説している。また、この版には過去10年間に行われた関連する既存研究を網羅した、全面改定版の文献目録も収められている。一番重要なことは、彼がソーシャルマーケティング、受容レートの予測、技術移転などを含む最新の研究、現在のトピックを論じていることだ。この包括的な研究はコミュニケーション、マーケティング、地理学、開発経済、政治学、社会学とそのほか次世代の関連する分野にいる学者と学生にとって必須書となるであろう。